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遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン2 魔界の劇団、開演
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、と」
「何かあったら全部うちの上司がやりましたって言いますよ。で、いったい何を掴んだんです?」
「裏デュエルコロシアム、だよ」

 ほんの一瞬だけ、何を考えているのかわかりたくない上司の目がスっと細まった。
 裏デュエルコロシアム。「BV」により大きく廃れたデュエル産業で、デュエルポリスへの転業を良しとしなかったプロ崩れなアウトローたちのたまり場。密かに観客を集めては、厳重に隠蔽された空間でデュエルを見せものにし、現金や高額レアカードを賭けの対象とする非合法産業。どれほどデュエルモンスターズが危険視されようと、ほんの数年でそのファンまでもが廃れるわけではない。賭けの胴元となり資金を荒稼ぎする裏家業はもちろんのこと、表の世界からも政治家、アイドル、財界人……彼らのパトロンとなり、厳重に隠された場所を提供し、自らの逮捕されるリスクを負ってでも失われたかつての熱狂をもう1度見たいと願う者はいくらでもいる。仮にそのすべてを摘発したとすれば国ひとつ揺るがすほどの大損害が発生するともいわれ、どこの国も下手に手が出せない頭痛の種である。

「……いいんですか、元同業者だっているでしょうに」
「アタシも、あいつらの考えることがわからないわけじゃない。むしろ、アタシみたいなのの考えがあいつらには理解できないんだろうよ。何せアタシは、尻尾振って公務員に成り下がった犬だからな」

 彼ら元プロデュエリストのことを語るとき、いつも彼女は懐かしむような、自虐するような、様々な感情の入り混じった複雑な表情を見せる。この人も、難儀なことだ。鳥居はこの地に配属されてから幾度となく反芻してきたセリフを、そっと胸の内で繰り返した。仕事も生活もその何もかもをイカれた科学者の意味不明な発明によって奪われ、あげくその科学者を雇っていた政府に雇われてかつての仲間とも戦わざるを得ないというのはどんな気持ちなのだろう。

「……それでも、止める必要がある。なにせプロ崩れの集まる大規模な大会みたいなもんだ、かなりレベルの高い奴が集まるだろうからな。そんな上質な戦闘データの回収なんてされてみろ、どれだけアップグレードされるかわかったもんじゃない」

 デュエルモンスターズを行う、それ自体が違法なわけではない。問題なのはそれに付随する賭け試合の横行、そして「BV」だ。血に飢えた観客を楽しませ勝負に臨場感を持たせるため、この手の裏試合と「BV」は切っても切れない関係にある。そしてデュエルポリスによる妨害電波の及ばない試合ではその戦闘データは根こそぎ回収され、そのアップグレードの糧となる。後者だけでも排除しようにも、今では人の傷つかない裏試合など誰も見向きもしない。皮肉な話ではあるが、確かに「BV」はその目的、デュエルの常識を壊し新たなステージへ進めるという目標を成し遂げているともいえ
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