暁 〜小説投稿サイト〜
稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
100話:第三次ティアマト会戦(決着)
[1/4]

[8]前話 [1] 最後
宇宙歴796年 帝国歴487年 4月上旬
ティアマト星系 艦隊旗艦パトロクロス司令室
艦隊司令パエッタ中将

「パエッタ、困難な状況なのは理解しているが、とにかく虎口を脱出する事だ。私がしんがりを務めるから少しでも残存兵力を率いて撤退してくれ。もう少し勝機があると思っていたが、見込みが甘かったようだ。時間がたつほど包囲からの離脱は困難になるあろう。タイミングを間違えば、ダゴン星域まで追撃を受ける事になる。まずは旗下の部下たちへの責任を果たせばよい」

「しかしながら閣下、それではしんがりを務める閣下の艦隊を見捨てることになります。いくら何でも聞ける命令ではございません」

「パエッタ、目先の事に囚われてはならん。このままでは4個艦隊全てが殲滅されてしまう。脱出できた者たちには再戦の機会があるのだ。冷静な判断をするのだ」

何とか私の乗艦は虎口を脱しつつあるが、包囲網の唯一の出口は敵ながら狡猾な罠が仕掛けられていた。数パターンの攻撃の濃淡が作られ、攻撃を避けようとすれば、僚艦との距離が近すぎて速度が保てず、速度を維持しようとすれば、攻撃をまともに受ける。そして全体を見ると、包囲網はフラスコ型になっている。
包囲から脱出しようと虎口にわが軍は殺到しているが、逃げられそうに見せながら、進撃速度を落とさせる巧妙な回廊に、想像以上に時間を取られてしまった。先陣の我々ですらやっとの事で突破できたのだ。続いてくるパストーレ艦隊とムーア艦隊がどこまで戦力を維持して脱出できるか予断を許さない状況だった。

「分かりました。一隻でも多く連れ帰るように努力いたしますが、小官は諦めたわけではありません。閣下も同じように考えて頂ければ幸いです」

「うむ。儂も意地を見せるつもりだ。安心してほしい」

「パエッタ提督、お話中に申し訳ございません。ムーア艦隊の旗艦ペルガモンの反応が消失しました。また、パストーレ艦隊の旗艦、レオニダスが被弾、指揮権を委譲した模様です」

申し訳なさそうにオペレーターが報告を挿む。これで包囲の中にある3個艦隊の内、2個艦隊が統一した動きを取ることが困難になった。

「そんな顔をするな。パエッタ。提督がそのような表情をしては旗下の兵たちが不安に思うだろう?撤退支援は1時間まで、それまでに脱出できた兵力を率いて速やかに撤収するように。これは命令だ。よいな?」

包囲下に残ることになるロボス提督からこう命令されてはうなずかざるを得ない。だが苦渋の決断だ。わが艦隊ですら既に半分近い戦力を失った。あと一時間では、虎口を脱出できるのはせいぜい1万隻だろう。45000隻近くを失うことになってしまう。第二次ティアマト会戦をそのままやり返されるような形になるだろう。ロボス提督がおっしゃられた通り、我々の見込みが甘かったのだろうか?
[8]前話 [1] 最後


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ