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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
97話:上昇と下降
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レに昇進で負けた事がきっかけで、政治家に近づく決断をして以来、何かと不本意なことが増えたように思う。軍人としての道を選んだ時から、いずれは統合作戦本部長に......。という思いがあったし、シトレと競い合う事で同期の中では真っ先に准将まで進んだが、私の前にはいつもシトレがいた。彼が士官学校の校長になった時に気づいた事だが、あれは将来の軍の第一人者にする為の人事だったのだと思っている。若手の優秀層に影響力を持てるし、10年もすれば将官になる者も出てくるだろう。その頃にシトレが統合作戦本部長なり宇宙艦隊司令長官につけば、組織としても安定するだろう。

だが、シトレが慎重、私は積極なだけで、負けたつもりはない。それに私には亡命者の血が流れている。素直に負けを認めたくは無かったからこそ政治家に近づいた。そこまでして昇進にこだわり、派閥を作ったまでは良いが、集まってくるのは『政治家の押し』がなければ昇進どころか、下手をしたら懲戒処分を受けるような人材ばかりだった。当てにできるのはパエッタぐらいだろう。
何かにつけて『士官学校首席』をアピールするフォーク准将も、親が右派支持者の中の有力者でなければ、精々まだ中佐だろう。シトレ派のヤン少将をライバル視して私の派閥に来たようだが、何かと周囲に自分の意見を強要するので、私自身も政治家の押しがなければ彼を抜擢はしなかった。
若手の作戦家となると、王道でワイドボーン少将、搦め手でヤン少将、バランス型でラップ中佐といった所だろうが、ワイドボーン少将には『群れなくては昇進できないと思われているとは心外です』と言われ、同じく独尊的なホーランド中将の艦隊の分艦隊司令に納まっている。ヤン少将とラップ中佐はシトレの子飼いだ。とても引き抜きは出来なかった。
グリーンヒル中将が宇宙艦隊の総参謀長に転出した後に、その艦隊を引き継いだのがホーランド中将だ。ムーアとパストーレは新設された艦隊の司令官となったが、星系警備艦隊の寄せ集めのような物だ。なんとか訓練の期間は用意できたが、どこまで仕上がっているのか、不安が残るだろう。

「コンコン」

ノックと共に、従卒がコーヒーを運んできた。礼を述べてコーヒーの香りを楽しむ。とは言っても、経済状態が決して良くはない家で育った私は、士官学校で出されるコーヒーで十分楽しめる。上層部だけが良いものを楽しむのも何か違う気がするし、初心を思い出させてくれるものを、日常に用意したかった気持ちもあった。シトレ派の艦隊司令部ではシロン産の紅茶が流行っているらしいが、我々は戦争をしているのだ。今は一歩譲っているかもしれないが、いずれ巻き返して見せる。
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