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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
96話:銃後の闘い
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属者リストが流出して、それが右派の支持者と地球教徒のあつまりだと暴露されてから、少なくともテルヌーゼンでは活動できていないようね。自警団も結成されたし、ゾーンダイク氏が代議員になった以上、警察も厳しく取り締まるでしょう。これで少しは良い方向に進めは良いのだけど......」

現役の軍人でもある夫のジャンからすれば、妻が左派の政治活動に参加するのは本来外聞が良い話ではない。ただ、憂国騎士団が反戦市民団体のデモに襲撃をかけた事で、現役軍人の中でも特に前線勤務を経験した層から批判が噴出した。彼らからすれば自分たちが命懸けで前線を維持しているのに、後方でぬくぬくとしながら『憂国』を自称して、銃後の女・子供相手に好き勝手していると映ったようだ。言論の自由は民主制を取る上で大事な要素だが、自分たちの対抗意見を暴力で封殺するなら、もう言論統制と同じだ。ジャンを始め、多くの現役軍人が妻子が左派を支援する事を黙認しているのも、こういう背景があるからだろう。

「今回ばかりは立件される事になると思うぞ?いつもは腰が重い『中道派』が動いているし、国防委員長になったトリューニヒト議員も憲兵隊に直々に要請したようだからね。彼は風見鶏のように世論を読むのが得意だし、要請を出した以上、中途半端な結果にはできないだろう。国防委員長になって最初の課題だし、彼の面子がかかっているからね」

トリューニヒト議員か......。俳優のような容姿と演説の巧みさで『中道右派』のプリンスとか言われているけど、私はどうも好きになれない。その時々で有権者うけしそうなことを並べ立てているだけで、ゾーンダイク氏みたいな政治理念が感じられないからだろうか?

「そうね。そうなってほしい所だわ。せめて戦死者が少しでも少なくなってくれれば良いのだけれど......」

私の不安を感じたのだろう。安心させるかのようにジャンが私を抱きしめる。この温もりを失いたくはない。同じ思いで戦地からの帰還を待つ市民も多数いるはずだ。その人たちの為にも私にできる事をしよう。まずは近々の課題を片づける為に、私はキッチンへ向かった。新婚夫婦で美味しい夕食を食べるのも大事なことだもの。


宇宙歴795年 帝国歴486年 12月上旬
首都星ハイネセン 最高評議会
ヨブ・トリューニヒト

「右派としては今回の件には全面的に賛成ですわ。『戦況が劣勢』という事実を踏まえれば『賛成』以外考えられません。戦争に勝利できれば、多少の事は市民も納得するでしょう。そもそも議論の必要性があるとも思えませんが......」

「ウインザー議員、ここは国家の意思を決定する場だ。議論を尽くすのは委員長職にある者の務めでもある。ここでは右派お得意の暴力での意見封殺も出来んがね」

「憂国騎士団の一件は私とは関係が無い事です
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