第二章
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「幾ら何でもな」
「カープ戦みたいに負けてないだろ」
「気のせいだろ」
「そのことは」
「そうかな」
友人達に言われて思いなおした、自分の気のせいだとだ。
しかしだ、それでもだった。
阪神の低迷期は続いた、一九九二年と翌年はよかったがすぐに低迷期に戻りそれは彼が大学を卒業して自衛隊に入隊してもだった。
阪神は負け続けた、それでだった。
実習で艦艇にいる時に阪神の試合を観ていたが負けていてだ。
巡検の時間になり一旦観戦していた食堂のテレビを切った時にだ、補給の海士長である橋本茂がこんなことを言った。やや小柄で明るい童顔、太った体型の二十代後半の人物で先日三曹の試験に合格した。
「さて、また点ける頃には三点取られてるな」
「いや、ここで三点取られたら負けですよ」
「もう負けてるじゃねえか」
笑って答えた橋本だった。
「実際にな」
「いや、ここからです」
「ここからかよ」
「大逆転ですから」
「三点取られるだろ」
「取られないですよ」
「じゃあ取られなくても負けるだろ」
そうなるというのだ。
「結局な」
「結局って」
「阪神だからな、というかな」
「というか?」
「御前が観てるから負けるんじゃねえのか?」
橋本はここでこう中西に言った。
「そのせいでな」
「私が、ですか」
「俺御前と観てる阪神の試合で阪神勝ったの観たことねえぞ」
「まさか」
「まさかじゃなくて本当にそうだからな」
中西と観ている試合はいつも阪神が負けているというのだ。
「だからな」
「私が観るとですか」
「阪神負けるんじゃねえか?」
「そんな筈ないですよ」
「いや、そうだろ」
実際にと言う橋本だった。
「俺が観てる試合全部だからな」
「記憶違いじゃないですか?」
「違うよ、俺こうしたことは覚えてるんだよ」
「そうなんですか」
「次の日新聞とテレビでチェックするしな」
そうしたこともしているからだというのだ。
「よく覚えてるからな」
「だからですか」
「御前が観てるとな」
阪神の試合、それをだ。
「阪神負けるんだよ」
「まさかと思いたいですが」
「それでも負けてるからな」
現実として、というのだ。
「だったらな」
「ううん、本当だとしたら嫌な現実ですね」
「そう思うならな」
それならと言う橋本だった。
「もう御前阪神の試合観ない方がいいぞ」
「そうしたら負けるからですか」
「今日も負けてるしな」
「いやいや、勝ちますから」
「無理だろ」
橋本の言う通りだった、巡検が終わった時にテレビを点けたが三点は取られていなかったが負けた。この時からだ。
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