第2章 項羽と劉邦、あと田忠 〜虞兮虞兮、奈若何〜
第6話 田忠、魔法使い辞めたってよ
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をこねたがなんとか説得した。
もうすぐここへ章邯が来る約束をしている。もう夜中だが、とても大事な話らしい。なんだろうね?
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昨夜はお楽しみでしたね。
◆
「章邯様、今日は一段とお綺麗ですね」
「ふふふ、そうですか? ありがとうございます。うふふ」
章邯は幸せの絶頂にいた。今日、田忠は、兵とともに涼の地を旅立った。
正直心配で胸が張り裂けそうだ。
話が出た当初、当然のようについてこうとした章邯を田忠は押しとどめた。
「秦の将軍として章邯の名は売れすぎている。秦は敵なんだ。だからまずい」
「しかし、それは田忠様も同じでは?」
「俺は地方と中央の間を取り持っていたからな。地方には色々と貸しがあるし、秦を追放されたに等しい俺には、同情的だろう。だから俺が行く」
「く、しかし、それでも私は――」
「章邯。貴女には涼の地を任せたい。これは貴女以外にはできない大事だ」
「……」
「貴女だからこそ任せるんだ。頼む」
「……御意」
はじめは、秦の英雄、田忠への尊敬だった。
それがいつのまにか、女として思慕を寄せるようになった。
実は、これまでも色々と愛情表現をしてきたのだが、全くこちらの恋慕に気づいていないらしく、周囲に同情されていたのを章邯は知っている。
そこに来ての、遠征の話だ。もう会えないかもしれない。
そう思うと居ても立っても居られなくなって、深夜に田忠の部屋を訪ねたのだった。そこで――――
「いかん、また昨日のことを思い出してしてしまった……でゅふふ」
「章邯様?」
道を歩く使用人たちが怪訝な顔をしているのにも気づかず、一人悦に入っている。
昨晩のことを思い出すと、どうにもにやけてしまう。
「……そういえば、魔法使いとは何だったのだろうな」
田忠は、事後、急に叫んだのだ。
『俺は魔法使いをやめたぞジョジョーーーー!!』
どんな意味だろうか。尋ねても教えてくれなかった。
もしや肌を重ねる行為は、仙人の禁忌だったのではと顔を青くしたが、違うらしくほっと胸をなでおろしたのを覚えている。
田忠の帰還後、正式に挙式を上げることを彼は約束してくれた。
もちろん、章邯だって涼の地を守り、発展させていくことも忘れてはいない。
ただ今だけは幸せに浸っていたかった。この胸の内の不安が打ち消されることを願って。
「義心様、どうかご無事で」
この澄み切った空のどこかで戦う英雄を想った。
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