暁 〜小説投稿サイト〜
ツインズシーエム/Twins:CM 〜双子の物語〜
ツインレゾナンス
第6話 非日常の訪れ
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は取り戻している様子だ。それを見てこれなら大丈夫だろうと考えたエースの心にも、偽りのない平静が訪れる。

「ねぇ、今のって何だったんだろう」

「俺にも分からん。校長から、最近生徒を襲うやつがいるとは今朝聞いたけど、それは依頼帰りの生徒だけで、フローラはその例からは外れてるしなぁ……」

「そこら辺の細かい事情はまぁ気になるけど……そもそもなんでフローラが襲われたの? そんなこと、フローラはしないよ……?」

 どこか自分に言い聞かせるようにも聞こえるセレシアのセリフ。それにはきっと、祈るような気持ちが含まれているのだろう。エースもフローラの人となりは十分に理解しているが、それが可能性の全否定を成しえないことも分かっている。

「俺だって恨みを買うような人物じゃないってことは知ってるよ。でも、相手が襲った原因が恨みではなく妬みだったとしたら、本人の性格関係なく買ってしまうことは十二分にありえてしまう」

「それってつまり……?」

「これ俺の口から言えることじゃないから差し支えない表現にさせてもらうけど、妬みを買ってしまえるほど優れたものが、スプリンコートさんにはあるってこと」

「それなら、確かに襲われても……」

 セレシアがエースの発言の意味を理解したのか頷き、その後すぐに自分の言葉にハッとしてすぐにフローラの顔を見る。エースの事実を述べた発言により曇り始めたフローラの表情は、発言したエースにとっても、見るに堪えないものだった。ただ、エースにも非がないことを分かっているセレシアは誰も責めることなく、そっとフローラに寄り添った。

「大丈夫だからね。誰かが妬んでこんな非道に走ってたとしても、あたしが守ってあげるから。あたしはずっとフローラの味方だから。心配しなくてもいいよ」

「うん……」

 久しく見なかった、泣きそうな顔のフローラ。そんな彼女を優しく包み込むような言葉をかけ、静かに抱きしめるセレシア。

 屋上を吹き抜ける風が髪や服の裾を揺らすその姿は、夕陽に照らされていることもあり、どこか美しく、儚いものに見えた。

 そして、その重なり合う姿に対して働いたエースの感性は、後々になって曇りのないものであったと、知ることになる。



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