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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
54話:団欒と陰謀
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あれから既に35年近いが軍部貴族は団結を取り戻し、息子たちも重職を勤めている。領地の経営も順調となれば出来すぎだろうし、健在であれば、父上も母上も褒めてくれたに違いない。ただ、贅沢を言えば私も前線指揮官としての才能が欲しかったと今でも思う事がある。

ルントシュテット伯爵家は代々軍人の家系だった。父のレオンハルトは前線指揮官として功績をあげ、息子の私から見ても、人格者だった。そんな環境で育てば、自然と前線指揮官を志向するだろう。だが、残念ながら私にあったのは後方支援部門の才能だった。悔しい思いもしたし、父と口論になった事もある。だが、それも今思えば良かったのだと思う。
もし、私に人並みの前線指揮官としての才能があれば、父と一緒に出征して、第二次ティアマト会戦で戦死していただろう。そうなれば、門閥貴族の軍部への浸透は防げなかっただろうし、幼い息子たちを抱え、妻のカタリーナも途方に暮れたはずだ。

母上が領地を切り盛りしてくれたおかげで、帝都での貴族との折衝に集中できたし、それが落ち着いて予備役入りしてからは、後方支援部門で軍歴を重ねた事と、貴族との折衝をみっちり経験していたことで、領地の経営と辺境領主や軍部貴族との関係強化を進める中で困ることは無かった。そう言う意味では私に後方支援の才能があった事は、当家にとっては良かったことなのだろう。
次代に繋ぐという意味では、次男と三男も伯爵家に婿入りしたし、長男の嫁も、軍部貴族の雄であるミュッケンベルガー伯爵家の直系のご息女だ。これ以上を望むのは強欲というものだ。あと何年、生きられるかはわからないが隠居なりにできる事をして逝ければ本望だ。改めてグラスにレオを注いて呷る。

「うむ、旨い......」

こんな夜を私が迎える事があるとは思っていなかった。そう考えると、悔しい思いをしたことも自然にほぐれて良い思い出に変わるような気がした。


宇宙歴780年 帝国歴471年 12月下旬
首都星オーディン リューデリッツ邸
ザイトリッツ・フォン・リューデリッツ

「ゾフィー、子供達を寝かしつけるのを頼んでもいいかな?今日中に確認しておきたい資料があるのでね。すまない」

帰りの車中で寝入ってしまったフリーダをメイドに預け、同じく寝入ってしまったフレデリックを抱きかかえるゾフィーに一声かけて、執務室へ向かう。嫡男のアルブレヒトもかなり眠そうな表情で、御付の者に支えられるようにして寝室へ向かった。確認するのは内密の資料だ。こちらはもういいので、休むようにと言い添えて、執務室に入る。

執務室に入ると、デスクの最上段の引き出しを開けて、天板裏側に付いた指紋認証システムに小指を押し当てると、右手の本棚の2段目が回転して小さめの金庫扉が姿を現す。金庫扉の上部にある虹彩認識システムに両目を当てる
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