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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
48話:帝都での日々
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ざいます。このザイトリッツ、感服いたしました。とは言え不肖の身ではございますが、これでも予定がある身でございます。こちらで失礼させて頂きます。楽しい時間をありがとうございました。」

そう言ってから、邸内へ進む。こう言っておけば、こちらが特に気にはしていないと伝わるだろう。執事だろうか、先導を受けながら応接室に進む。ドアが開き、フランツ先輩が立ち上がって出迎えてくれる。

「マリーンドルフ伯、待望のお子様のご誕生、おめでとうございます。」

「ありがとうリューデリッツ伯。それにしてもお互い伯爵家の当主になるとはあの頃は想像できなかったなあ。」

そんな言葉を皮切りに、先輩と旧交を温めた。マリーンドルフ伯爵家はカストロプ公爵家と血縁関係にあるので、成果が出ると分かっていつつも中々あたらしい政策を行うのは難しいそうだ。奥方もまた産後の日立ちが悪く床払いが出来ずにいるらしいし、キュンメル男爵家に入り婿した弟君も体調を崩されているらしく、心配事が絶えない様だ。確認はしなかったが、仲人に近い存在であるヴェストパーレ男爵夫人が、奥方を心配して連日こちらに押しかけているそうだ。まあ十中八九、あの母娘だろう。
そんな話をしながら、タイミングを見てシルバーカトラリーを納める箱と最初の銀の匙を先輩に渡す。カストロプ公爵に関係する門閥貴族とは言え、先輩は良識人だ。今の関係は維持したいからね。先輩も快く受け取ってくれた。しばらく歓談してから改めて祝辞を述べて部屋を辞する。玄関に向かう途中で、何やら意を決した様子で、先ほどの姫君が駆け寄ってきた。

「お知り合いのご息女という事でヒルダに贈り物をするなら、わたくしはあなたの姫君なのですから贈り物を受け取る資格はあると思いますわ。」

「左様でございますが。このザイトリッツ、姫君に贈り物を受け取って頂けるとあればこれに勝る喜びはございませぬ。お誕生日にはお届けいたしますのでお納めいただければ幸いに存じます。」

俺がそう言うと、姫君は嬉しそうに待っていますと言って、おそらく母親の元へだろう。走り去っていった。フランツ先輩のご息女、ヒルデガルド嬢と同格の物をお送りしておこう。予想外の出来事もあったが、心温まるひと時におれはかすかな安息を感じていた。
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