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渦巻く滄海 紅き空 【下】
十四 しずめゆく者
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引っ張り上げている。


汚泥からずるり、と彼女の身を救った相手を、九尾は剣呑な眼つきで見据えた。


《貴様……》
「久しぶりだね、九喇嘛」




ナルの身を沈ませようとしていた汚泥が、彼が足を打ち鳴らすと、澄んだ水へと忽ち変わっていく。
熱気に溢れていた回廊も、清浄な空気が吹き抜け、いつもと同じ、静けさが戻ってくる。


唯一、いつもと違うのは、この場にはいないはずの存在がいるという事だった。


《小僧…ソイツに何をした?》
「変わったねぇ、九喇嘛」


ぐったりとしているナルの身を案じているらしい九尾に、ナルトは微笑ましげに微笑する。

まだ九尾チャクラに翻弄され、理性を失う事もあるけれど、意外と人柱力と尾獣の関係は概ね良好な関係らしい。
心配していない風情を装ってはいるものの、ナルを気にしている様子を見て取って、ナルトはゆるゆると双眸を細めた。



ナルが九尾チャクラを纏ったと理解した瞬間、ナルトは己のチャクラを蝶へ宿した。そうして、九尾チャクラと蝶が接触するや否や、自分のチャクラがナルに注ぎ込むように施したのだ。
彼女を落ち着かせる為、内部からの精神安定を試みたのである。





「ナルを…これからもよろしく頼むよ──九喇嘛」



見事、落ち着かせたナルの髪を撫でる。自分と同じ、だけどナルトよりずっと長い金色の髪がさらさらと指の間をすり抜けていく。

額に汗でへばりついた前髪を掻きあげて、「もう…大丈夫だよ」と彼は囁いた。

その優しく穏やかな眼差しは、確かに、兄のものだった。







そうして、次の瞬間には、九尾の前からも、そしてナルの前からも、ナルトの姿は消えていた。








































ぽこり、ぽこり。
ナルから迸る殺気とチャクラ。

髪留めが燃え尽き、二つに結わえられていた長い金の髪が風に靡いている。


眼に見えるほどの凶悪な九尾のチャクラに、カカシは冷や汗をつう…と流した。

(自来也様…恨みますよ)

風影奪還の任務ですぐさま木ノ葉隠れの里を出発した為、カカシは自来也からナルの近況について、何も聞いていなかった。ましてや、九尾チャクラが漏れた時の対処法など。



写輪眼を使った手前、既にチャクラは残り少ない。この状況で、九尾の封印が解けてしまったらとても太刀打ちできない。
おぶっていた我愛羅を木の幹に横たわらせ、九尾チャクラを纏わせるナルを見つめながらカカシは思案する。ふと、何処からか視線を感じた。おそらく、デイダラだろう。

しかし、今は
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