第1章 春秋戦国時代〜不知而言不智、知而不言不忠〜
プロローグ
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「あの政が、まさか皇帝になるとはな。いわゆる始皇帝ってやつかな」
「おお、わが友、田忠いや、義心よ。始皇帝とはよい呼び名だな。余は、これより始皇帝と名乗ると致そう」
「せっかく中華を統一したんだ。これからが大変だぞ、始皇帝さん」
「うむ、責任は重いが任せておけ。無論、お主にも手伝ってもらうぞ」
「もちろんだ。お前さんだけに重責を押し付けないさ」
咸陽の巨大な宮殿の豪華な部屋で酒を飲みかわす。それも二人だけで。目の前には偉大な王がいた。
中華を統一した政、始皇帝とため口をたたく自分が、いまでも不思議で、現実感がない。
(うーん、始皇帝って歴史の授業で習ったような気がするんだよね)
普通なら、タイムスリップを疑うところだろう。だが、俺は違うと断定できる。
「ははは、余を口説くつもりかな」
上機嫌に笑う、妙齢の女性。そう、始皇帝こと政は女性なのだ。
だから、中華風ファンタジー世界に俺は生まれたのだろう。
これまで色々あったよな。親友である政と出会ってからも激動の人生だったが、それまでにもいろいろあった。
政には、孤児の自分を拾った僧侶によって、育てられたとしか言っていない。
俺の最大の秘密は、たとえ政にでも打ち明けることはできない。
俺、転生者なんだよね。
◆
「オギャア、オギャア」
赤ん坊の泣き声が響く。土で固められた道の上に、無造作に置かれていた。周囲に人影はない。
(どうしてこうなったんだ……)
さきほどからずっと考えている。思考はぐるぐる回るが、どうしようもない。
なぜなら、俺は生まれたての赤ん坊なのだから。
耳障りな泣き声も、俺のものだ。
(神様、話がちがいますよ!)
俺の名前は、田中心。つい先ほどまで、高校生だったが車にひかれて死亡した。
その後、神さまっぽい存在に会って、転生しろと言われた。
チートを3つまで貰えると言われたら、喜んで転生するだろ。
で、生まれたあと、すぐに捨てられた。
理由は、俺が銀髪オッドアイだったから。両親のどちらにも似ていない。
不義を疑われることを恐れた母によって、俺は捨てられた。
(神の罠か、それとも自業自得なのか)
生後数時間で、転生生活が終わるなんて、あり得ないだろ!
そりゃ、チートで容姿を指定したのは俺だし、生まれる年代を選べるというから、好きに選んだのだけれども。
今は戦国時代のはずだから、迷信が蔓延っているし、命の値段が現代よりも価格崩壊している。
正直、俺が助かる見込みはないだろう。
グッバイ、俺の二度目の人生。
「―――――?」
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