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渦巻く滄海 紅き空 【下】
十二 奪還
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援部隊が休む為に用意された客室へと向かった。
カンクロウが握っていたサソリの服裾を忍犬に辿らせている間、休ませてもらっていた部屋である。
結局毒ガス騒ぎで、治療室に入り浸りになっていたものの、荷物などを置かせてもらっていたのだ。

チャクラを使い過ぎたので、今の状態でナル達の増援へ向かっても、足手纏いになるだけだ。
それに、カンクロウも我愛羅を奪回する為に、里を出るという。
それに同行させてもらう為、とにかく荷造りをしようと考えたヒナタは、自分達木ノ葉の忍びに宛がわれた部屋の扉を開けた。


「えっ!?」

部屋に入った途端、想像していなかった相手が室内にいるのに気づいて、ヒナタは驚愕する。
我愛羅を奪還する為に、とっくに砂隠れの里から出たはずの彼女の姿をまじまじと眺め、ヒナタはおそるおそる訊ねた。


「な、ナルちゃん…?」

じっと動かず、静かに眼を伏せているナルが部屋の隅で座っている。


窓から入ってきた小鳥が肩に乗っていても、微動だにしない。
ヒナタがそっと近寄ると、小鳥は逃げ出したが、ナルは依然として黙している。


「ナルちゃん、いつからここに…?いのちゃんと一緒に行ったはずじゃ…」

砂隠れの里を襲い、我愛羅を攫った『暁』の一員。
サソリの匂いを辿った忍犬の案内で、はたけカカシ、山中いの、そしてチヨと共に、我愛羅救出に向かったはずである波風ナルが残っている事に、ヒナタは戸惑う。

何も反応しないナルの肩に、おずおず触れようとしたその矢先、白煙が立ち昇る。

「な、ナルちゃん…?」
座禅を組んでいたナルの姿が白煙と共に目の前で掻き消える。
妙な現象だが、思い当った術の名を、ヒナタは口にした。


「……今のは…【影分身】?」




ナル本人ではないような気はしていたので、彼女が得意とする術だとは勘付いたものの、ヒナタは首を傾げる。
何故、影分身をわざわざ一体、砂隠れの里に残していたのか。

動かずに、ただじっと黙しているだけの影分身をつくるにも、チャクラが必要だ。
戦闘において大事なチャクラを何故、影分身に回しているのか。


動揺と疑問が入り雑じりながらも、ヒナタはカンクロウが里を出ようとしているとの知らせを耳にして、慌てて身支度する。
部屋を出る寸前、先ほど白煙と化して消えたナルがいた場所をチラリと見やる。

ナルの残像を掴むように、眼を細めて、ヒナタは心の内でナルに呼びかけた。

(ナルちゃん…今から私も行くからね…!)



ナル・いの・カカシ、チヨ、そして我愛羅の無事を願いながら、ヒナタは砂隠れの里を出発する。
治療で既に疲労困憊しながらも、少しでも力になる為に。














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