暁 〜小説投稿サイト〜
嗤うせぇるすガキども
今日も空は青かった(後編)
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
けにはいきまへんな」

 彼は札束を見て、数を数えてからそう言った。

「利息の部割り計算はしておりまへんのや。あんさんは一年で一割という約束や。
 やから、まだ期限が来ておらへんのに利息まで受け取れまへんな」

 闇金なのになぜか律儀な彼は、かたくなに利息を拒否した。
 これも悪魔補正かも知れない。
 後味が悪いので「交通費」と言いくるめて百万円受け取ってもらった。






『で、結局戦車相乗りはしなかったわけね』

 そろそろ契約から半年が見えてきたころ、僕のフォローに現れた二匹の悪魔は、それを知ってあきれていた。

『だからといって契約はチャラ、ってことにはならないぞ』

 それはそうだろう。彼らは責任を持って信義に背き不誠実に働いてくれたのだから。

「うん。それはわかってる。
 それに僕の本当の目的は女の子と楽しく過ごすことであって、戦車は三の次だったんだ。
 それがよくわかったし、期限付きとは言え楽しい人生になりそうだ。
 ありがとう。地獄ではよろしくね」

 これまで生け贄の人間から「ありがとう」なんて言われたこともなかったのか、この二人は呆然としていた。
 でも、僕にとっては地獄に行くのが数十年早くなっただけの話だ。
 そしてその数十年が、生き地獄でないという保証もどこにもない。



 そして、契約から半年がたった。

 僕は、学園のベスト3の美少女たちから交際を迫られていた。
 以前だったら大喜びだったろう、3人とも美味しくいただいていたにちがいない。
 でもなんか、それっておかしくないかと思う。
 向こうは真剣なんだ。
 それをそんないい加減な扱いをしたら、オモチャにしたのと変わらない。
 そして僕は、その3人の誰ともつきあいたいと思っていなかった。
 だって、前の彼氏をみんな振っているんだから。
「上っ面だけキレイ」だから何だというのだろう。
 中身は結局僕と同じだ。スペックだけの人間だ。
 実はこの時期、僕には好きな子がいた。
 でもその子は、僕を見ると逃げるように去ってしまう。



 しかたがないので、3人をいっぺんに校舎の屋上に呼んだ。

 3人は「こいつも粉かけていやがったのか」とにらみ合う。
 そして、僕のことも「なんて無神経な奴」と思ったかもしれない。
 でも、表面上はにこやかにしている3人に、僕は誰も選ばないこと。
 つきあう気もないこと、好きな子が別にいることを全部伝え、あぜんとする3人を屋上にのこして、階段をかけ下りた。
 僕は君たちのコレクターズアイテムじゃない。さようなら。

 変なところで人を見る目がついてしまったものだ。
 ハーレムって男の夢なんだって?
 夢は夢でも、悪夢だよね。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ