暁 〜小説投稿サイト〜
提督はただ一度唱和する
過ごした時間
[4/4]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
視線はなくなった。寒さに麻痺していた鼻が、特徴的な薫りを嗅ぎつける。何事か言い募る軽空母鳳翔を無視して、新城は山城に近づいて咥えていたそれを握りしめた。驚く周囲と、剣呑な目を向ける扶桑。今さら、この段階で、新城の行動を咎めようとする無能ども。
「大麻、ですか」
 火が付いたままのそれを、丁寧に握り潰す。上官への口調を保てたのは奇跡だ。彼女らは佐官待遇で、場合によっては新城たちに死を命ずることさえ出来る。それを、決して忘れてはならない。
 もはや、新城の耳に人間の言葉など聞こえなかった。ただ、宣言した。
「言い訳は結構。今は、お互いに協力しあう、そうした間柄です。違いますか?」
 知っている。貴様らは提督とやらが大事なのだろう。この凶相の男が浮かべる、あまりにも場違いな朗らか過ぎる笑みに、艦娘たちの顔が青醒める。新城は満足そうに頷いて、先導した。尻を向けたのだ。
 見る限り、奴ら自身が連携など不可能。陸軍との協同など、考えるだけ無駄だ。
 ならばどうすべきか。
 決まっている。
 全て台無しにしてやればよいのだ。
 一介の中尉でしかない新城は、そう決意を固めた。周囲を走り回る者たちが同意の歓声を上げ、艦娘たちはただ立ち尽くしていた。
 深海棲艦の来襲まで、あと一日。
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ