暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第10話 美女と田舎っぺ
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を、知らしめるかのように。
 レスキューカッツェが所有している試作一号機と二号機はアメリカで運用されている。今現在、日本で和士達が運用している機体は試作三号機。性能で言えば、他の二機より優れているはずだった。
 にも関わらず、倍以上タイムに差をつけられている。その現実と直面した和士は、操縦桿を握る手を悔しさで震わせた。

(……訓練生だから仕方ない、とかじゃない。俺が上手くやれないと海原の出動が遅れることになる。そうなれば、救われたはずの命を見殺しにする羽目にも……くそッ!)

 ヒーローとして名を上げ、父の名誉を取り戻す。それが如何に大言壮語であるかを――数字という形で突き付けられた和士は、両手を震わせたまま目を伏せ、歯を食いしばるのだった。

 ……一週間後。
 世間がクリスマスで賑わい、海を隔てた先の大都会が、より一層活気を増すようになってきた頃。
 年末休暇を目前に控え、気を緩めた訓練生達が談笑しながら校内を往来する中――和士は一人図書室に篭り、「超水龍の方舟」の資料を熟読していた。

(来年の春には、俺も海原も卒業して正式なヒーローになる。……あいつは変人な上に田舎者だが、ヒーローとして大切なものを持っている。きっと大丈夫だろう。けど、俺は……)

 資料に視線を落とし、考えに耽る和士は憂いを帯びた表情で、今の自分を省みていた。
 プロどころか身近な親友にも敵わないまま、卒業の日を迎えようとしている。卒業すら危うい他の生徒から見れば贅沢な悩みなのだが、それでも和士は真剣だった。

(俺は……あいつのように強くない。けど……それでも。諦めるわけにも行かないんだ)

 ふと、和士は携帯に送られてきたメールに目を移す。そのディスプレイには、あの橘花麗から送信された文面が映されていた。
 ――夏の日の一件以来、プライベートでも度々交流するようになった二人は、こうして連絡を取り合うようにもなっていたのだ。それが原因で、和士が警視総監に目を付けらたりもしているのだが。

(麗……)

 そのメールには――ヒーローを目指す和士を素直に応援する、純情な少女の想いが綴られている。顔を合わせればつっけんどんな態度を取る彼女も、メールになると素直になれるらしく……和士を案じる旨の内容が、長々と書かれていた。
 一方で彼女自身も、G型学科を諦めてはいないようで――今日の夜に東京国際空港からアメリカ行きの三二一便に乗り、救芽井エレクトロニクス本社との交渉に発つとメールに記されている。

(麗も、頑張ってるんだよな……。なのに、俺は……)

 和士はそんな彼女の、相変わらずの強気な物腰に微笑ましさを覚える一方で――自分だけが置いていかれているような錯覚により、焦りを心に滲ませていた。

 凪は現在、救芽井エレクトロ
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