第01部「始動」
第04話
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「ラピス」
「なに、アキト?」
「今日は俺の-昔の-部屋で寝るか?」
今日…事が成れば、ラピスと一緒にいるのは最後になる。最後くらいは安らかでいて欲しい。
難しい事は解っている。だが、俺にはその責任がある…ラピスの笑顔を奪っていた責任。今日ほど強く実感した事は無かった…ごく自然に、微かでも笑顔を出す片鱗が有ったにも関わらず、俺は復讐に身を任せてラピスの感情を殺していた…
「うん!」
いつもと違うことを言われたせいだろう。ラピスの動揺…いや、混乱が伝わる。
ナノマシンによる意思の伝達…制御、相互干渉。以前に俺が昔の夢を見た時、激しい感情の渦に ラピスが夜泣き出す事があった。思えば、ラピスが感情らしい感情を出したのはアレが初めてだったんじゃないだろうか。
「ラピスのベッドは小さいからな…今日は俺の部屋で寝よう」
「わかった」
「……」
いつもは救われるが、今日はラピスの視線が胸を叩く…
慈しむ…なんて感情、残っちゃいないと思ってたのにな…
「アキト?」
「何だ?」
「こまってる、の?」
「……いや、ラピスは良い子だな」
リンクで感情が流れたか?
だが、先程の問答を忘れずにいたラピスに嬉しく思う。小さな事だが、俺がラピスの為に何かを残してやれたなら…俺も少しは救われる。
「アキト?」
「ん?」
マントの端を引かれる。
見ればラピスが心配そうに見上げている。
「アキト、へんだよ」
「…ラピス。もし、俺がいなくなったらどうする?」
「嫌!」
ギュっと抱きつかれる。解ってた事だ。だが、ラピスが望もうが望まないが俺は近い将来ラピスと別れないといけない。
「ラピス…お前は自由になるんだ。今ならまだ大丈夫。同じ仲間のルリちゃんの所でも…エリナやアカツキの世話にもなれる…俺と一緒に居ては何も変わらない。その方がラピスに取ってずっと良い」
「私はアキトの目、アキトの耳、アキトの手……私はアキトと一緒。独りにしないで…」
「何も、ずっとさよならってわ……」
先は言えなかった。ラピスの頬に伝うものを見てしまった。
涙
俺からの干渉じゃない、ラピス自身の感情による涙……俺は何も言えなくなった。
「夢でもアキト言ってた……さよならって、聞きたくない。胸が痛くなる……アキト。さよな ら……って、言わないで。お願い」
こうなってしまっては、俺に言える事なんて無い。震えるラピスの頭を撫でながら、俺は心でラピスに謝り続けた。
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『マ、マスター!?』
「…?どうした、何を驚いている?」
「……」
泣き止んだラピスを連れてブリッジに入ると大音量でラムダの叫びが響いた。
同時に、投影されていた無数の映像も消える。また何かしてたな…
『どうしましたラピス?』
「…
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