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うぬぼれ竜士 ~地球防衛軍英雄譚~
第2話 翼の姫君
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男』に張り合おうとしたんだって。強いには強いんだけど、そういう無茶な人だったから、うぬぼれって呼ばれてるんだってさ」
「……確かに、それは無謀ね」

 前大戦で、マザーシップを撃墜し、この地球を救った「伝説の男」。嘘のような戦績を残した彼の存在は、遠い海を隔てたこのイギリスにも深く浸透していた。
 ゆえに、フィリダは「うぬぼれ銃士」の名が妥当であると感じていた。世間に伝えられている「伝説の男」の所業など、人間が真似できるものではないのだから。

『フィリダ・エイリング! コリーン・マクミラン! 貴様らいつまで無駄口叩いてる、さっさと帰投せんか! 遊んでると減給と降格では済まさんぞ!』
「は、は、はいぃっ!」
「……わかりました」

 そんな彼女達の語らいを、隊長の怒号が吹き飛ばして行く。ペイルウイング隊は隊員のほとんどが女性であり、指揮官も例外ではない。

 ……が、エリート部隊ならではのプレッシャーゆえ、男性顔負けの苛烈な上官が多い、という一面もある。さらにインベーダーとの実戦経験においては旧来の陸戦歩兵部隊に劣っているという点も、ペイルウイング隊幹部の焦りを煽る結果を招いていた。

 上記の理由から、ペイルウイング隊は女所帯とは思えぬ程の修羅の国と化しており、第二次大戦以前から除隊を願い出る隊員は少なくなかったと言われている。
 そんな中にいるからこそ、彼女達ペイルウイング隊員は、たまにある休暇のひと時を至福の喜びとしているのだ。上官の叱責やエリートとしてのプレッシャーと戦いながら、なおも自ら訓練に励もうとしている猛者など、正規隊員の中にすら数える程度しかいない。

 ましてや、花の10代がほとんどと言われている候補生上がりの中でそんな考えを持っている隊員など、フィリダ以外には誰一人として存在してはいまい。

「う〜こわ……。と、とにかくもう帰ろうよぉ。隊長、前にも増してご機嫌斜めだし……」
「あなたが隊長のプリン食べたりするからよ……ッ!?」

 ――だが、その狂気とも呼べる訓練への情熱があるからこそ。
 彼女は、誰よりも早く察知出来たのだろう。

「キャアアアーッ!」

 街中から響き渡る、女性の悲鳴を聞き取るより早く。

 復興中の建物に取り付けられていた、板の足場が崩れ――下にいる子供を、下敷きにしようとしていたことに。

「――ッ!」
「えっ!? ちょちょ、ちょっとフィリダぁ!?」

 コリーンが制止の声を上げるよりも早く、フィリダの飛行ユニットはその現場に目掛けて火を噴いていた。

 一方、足場の下にいる5歳ほどの幼気な少女は、自分を覆う影に気づいても微動だにしていない。自分に起きている事態に、理解が追いついていないためだ。
 その近くには、パトロールに当たっていた緑色
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