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新訳紅桜篇
7 夢は、嫌なことだらけ
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が出ない…


  私は、持っている力を振り絞って、全力で叫んだ。



  _「高杉ッ、逃げろォーッ。後ろだ、後ろに気を付けて、ただ逃げろォーッ!
    私は、後から行く。」



  高杉(あいつ)が振り返る。
  そして、分かった、とでもいうように頷き、走っていった。




  とりあえず、ほっと息をついた瞬間、右肩に異変を感じた。


  _もしや…兄者!?

   しまった、マズいことになった…。
   もう手遅れか…?


  恐る恐る振り返ると、(あにじゃ)がすぐそばに立っていた。



  そして、目にもとまらぬ速さで、私の腕を取り、縛り上げた。



  _!


  渾身の力で抵抗するも、全然効かない。

  _「放せ兄者、お願いだから。分かったから、放せ。おとなしくするから。
    頼む、兄者…。」


  それでも兄者(あいつ)には、私の言葉を無視して、従者たちに告げる。



  _「(あいつ)を、本部へ連れていけ。本部で、あの方が待っておられる。」




  …え?ちょっと待って…え?「あの方」?…誰、それ?
  ってか、人の話を聞け、コノヤロー!



  もういい、こうなったら、最終手段を使ってやる。
  そう、「魔法」の力。





  (あにじゃ)が、私から目を離した隙に、私は一瞬の間時間を止める呪文を唱えた。


  その隙に、袴の足首のところに隠しておいた万能ナイフで、縛ってある縄に切れ目を入れた。
  少しの力で切れるくらいまで。



  _よし、これで準備は整った。



  時間を解放する呪文を唱える。


  すると、時間はもとに戻った。




  だが、時間とはあっという間だ。
  さきほどの従者は、もう目の前にまで来ている。

  前と後ろ、右と左から。



  _結局、全方向からじゃないかァァァ!
   どーなってんの?私、罪人なの?





  どうしようか、計算する。
  ふとその時、「殺し屋の直感」が、時を知らせた。


  _…今だ!



  渾身の力を込めて、縄を引きちぎり、腰に差した剣で迫ってくる従者たちを、
  次々に倒していく。



  やっと最後の一人が終わったと思ったら、後ろから聞き覚えのある声がした。


  …(あにじゃ)

  _「随分と強くなったものだなァ…。」


  だがそれは、明らかに1人の声ではない。


  その声は…
  高杉…?



  なぜ、ここに?







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