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武装少女マキャヴェリズム〜東雲に閃く刃〜
第五話 女王蝶
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らなかった。

「今分かりましたですわ! 貴方、五剣ひいては我が麗しいメアリお姉さまを小馬鹿にしていらっしゃいましね!? もー許せませんわ! いくら同性とはいえ、メアリお姉さまのことだけは見過ごせませんわ!」

 取り出したるは鞭であった。明らかな戦闘態勢。己が本能に刻まれた反射で既に手は竹刀の柄へ。
 だが、すぐに手を離した。

「何のつもりですの!? 貴方も武器を持っていることは分かっていますわ! 早くその竹刀袋に納められた竹刀を抜けばいかがですの!?」

 薔薇咲の最後通告。しかして、紫雨はその言葉に耳貸さず。
 むしろ、返す言葉は決まっていた。


「――抜かぬ」


 薔薇咲は表情が強張った。しかしそれも僅かな事。すぐに廊下へ響き渡るはかんしゃく玉のような小気味いい破裂音。先端へ行くほど細る形状なことにより、手元で発生した運動が最終的に音の壁を越えた速度で空気を打撃することで起こる現象である。
 そしてその速度は鞭の先端を刃物と昇華させることさえ必然。
 リーチもある、攻撃力もある。全てにおいて紫雨劣勢の旗模様。
 その有様を見せつけれてなお、紫雨が口にする言葉は一つ。

「当方に戦闘の意思無し。速やかにその鞭の収納を希望する」
「ならばここで土下座の一つでもなさいまし! メアリお姉さまを侮辱したのです! それくらいやって当然ですわ!」
「それは拒否する。私は薔薇咲殿とのやり取りで一切悪意ある言葉を言った覚えはない。そして、今振り返ってみても、私の言動に、薔薇咲殿がそれほどに激昂する所は無かったと考える。故に――」

 紫雨が一歩踏み出ると、薔薇咲は一歩下がってしまった。
 リーチはこちらの方が上、そして場所は室内。自分にとってこれ以上にない戦場のはずなのだ。それでも、薔薇咲は“下がらされた”。

「うー!!」

 今度は振るった。その音速の扉を叩ける鞭を。肩に走る痛み。少しだけ生地が裂けてしまったが、紫雨は眉一つ動かさない。

「どうですの!? 今ならまだ謝れば許して差し上げますわよ!」

 流石の薔薇咲も、無抵抗の相手をいたぶる気はなかったが故の譲歩。そんな事が敬愛すべき亀鶴城メアリに知られてしまえば何と言われるか分からない。
 ここで納めることにより、全てが円満に終わる。


 その意図を十二分に理解していた紫雨は、それでも首を縦に振るような人間ではなかった。


「断る。先ほども言った通りだ。薔薇咲殿は誤解をしている。故に、誤解を解くまで頭を下げる訳にはいかぬのだ」
「もう! こうなったら泣いて謝るまで許しませんわー!」

 再び振るわれる鞭。音速の刃は一目散に紫雨を切り裂くべく飛翔する。
 しかして、それが彼女に当たることは無かった。

「えっ!
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