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渦巻く滄海 紅き空 【下】
三 瓦解
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「――生きたいか」


不意に、頭上から澄んだ声が注がれた。
対峙していたサソリという男の声ではない。カンクロウは顔を上げようとしたが、痺れる全身では指一本動かす事さえ叶わなかった。

伏せた顔で目線だけを上げようとしても、太陽の強い陽射しがカンクロウの眼を焼く。
足掻こうと引っ掻いた指が砂に塗れ、砂漠に吹き荒れる風がカンクロウの身を徐々に砂漠の一部とさせる。


「もし生きられるなら、お前はどうする?何を望む?」

幻聴かもしれない。死ぬ間際の幻覚かもしれない。熱い陽射しによる陽炎かもしれない。
けれども、何を解り切った事を、とカンクロウは応えた。


「弟を…――我愛羅を助ける…ッ」


カンクロウの心からの望みに、眼の前の陽炎は頷いたようだった。
力を振り絞って視線を上方へ上げると、白いフードがはためいているのが垣間見えた。



「…ならば、弟を―――我愛羅を諦めるな」



暁天を背に、陽炎は倒れ伏すカンクロウに囁いた。
遠のく意識の向こう、我愛羅を連れ去った『暁』の男達とは微妙に違う、鈴の音が聞こえた。




「―――兄なのだから」


やけに切々とした、夢幻の声を最後に、カンクロウはプツリ、意識を失う。
気絶する寸前、毒による苦痛が幾分か弱まった、そんな気がした。



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