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トシサダ戦国浪漫奇譚
第一章 天下統一編
第十九話 同士
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いと。風魔衆が私を頼るとすれば庇護を求めるくらいしかありませんよ。よしんば風魔衆が私を騙すために行ったことだったとしても、彼らが徳川家と北条家の間者を始末するような真似を自ら進んでやる利益は何でしょうか?」
「忍びの言葉など信じられるわけがあるまい!」

 福島正則は声を荒げて俺を非難した。

「私も信じてはいません。そのために藤林長門守と柳生又右衛門をつけているのです」

 俺は藤林正保と柳生宗矩の名を上げた。

「殿の仰る通りです。ですが、風魔衆の頭領、風魔小太郎、は殿への恭順の証として人質を出しております。それに韮山へ怪しい者の出入りはこの一月(ひとつき)確認しておりません。韮山城から城外に出ようとする間者の姿も確認しておりません。間者を出しても意味が無いと理解したのでしょう。風魔衆は少なくとも殿の期待に応えております。忍びとはいえ矜持はございます。一度受けた役目を反故にすることはありません」

 藤林正保はそれとなく忍びと蔑んだことを非難した。福島正則は黙った。彼も口が過ぎたと思ったようだ。蜂須賀家政は藤林正保の説明を聞き終わると納得している様子だった。

「分かった。相模守、好きにするがいい」
「私も福島と同意見だ。相模守がここまで準備をしていたとは。心配して損した。だが、気をつけろ。戦場は思うようにいかない」
「蜂須賀の言う通りだ。気をつけるのだぞ。相模守、臆病になれ。ただ勇猛な者はいずれ矢弾に当たり死ぬ。いいか相模守。最後まで生きていた者が勝者なのだ。勇猛な者は勝者ではない」

 福島正則は真剣な表情で俺に諭した。彼は語り終えると深い溜め息をつき、
視線を落とし拳で床を殴った。突然の行動に皆驚いた。

「蒲生様の言葉がようやく合点がいった。俺達が三介殿の采配に苦しんでいる時、お前は高みの見物をきめておったということか」

 福島正則は無味乾燥な物言いで淡々と言った。彼は顔を上げるといきなりを手を上げ俺の頭に拳骨を落とした。俺は一瞬何が起こったか分からなった。頭にじわじわと広がる痛みに俺は手で押さえながら言葉が出なかった。
俺が涙目で福島正則の顔を見ると、福島正則は口角を上げ俺のことを見ていた。

「これで俺達に隠しておいたことは無しにしてやる。お前が大手門を突破したら俺も韮山城攻めに加わる。文句はないな。相模守、必ず大手門を突破するんだぞ!」

 福島正則は口を開き歯を見せ笑った。

「城攻めに協力してくださるならありがたいことです」
「蜂須賀も加わるだろう?」

福島正則は俺の返事に満足げに頷くと蜂須賀家政の方を向いた。

「当然だ。手柄を相模守に総取りされては俺の立つ瀬がない」

蜂須賀家政も乗り気なようだった。俺は彼らに頭を下げ礼を言った。
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