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渦巻く滄海 紅き空 【下】
一 暁の静けさ
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。なにしろ木ノ葉病院で入院していた際にお見舞いとして貰ったものだから。

花の送り主である、うずまきナルトの姿が一瞬脳裏に過ぎる。
彼の髪は、現在眺めている月のような綺麗な金色だったな、と自身も金髪であるにもかかわらず、ナルは窓辺に腰掛けながら思いを馳せる。

ラーメンを一緒に食べに行く約束を未だに果たせていない事実が気掛かりだが、何処にいるのかわからぬ相手だから仕方がない。しかしながら昔から、約束事に敏感である彼女は、他の人間よりもずっと約束を重んじていた。

いつか必ず、と意気込んでから、そろそろ寝ようかと腰を上げる。もう一度、ちらりと道端の小さな花を目にして、明日宿を出る時に水でもあげようかなと思う。

木ノ葉の里への帰還前夜、そんな、他愛のないことを波風ナルは考えていた。














吹き荒れる砂嵐。
強烈な陽射しと歪んだ熱気の中、場にそぐわない清澄な鈴の音が響き渡る。

灼熱地獄の世界で鳴る鈴は心が休まる唯一のようだったが、その鈴の持ち主は砂漠を進むにはとても似つかわしくない風体だった。
鈴が連なる笠を目深に被る二人の男はこの熱気だというのに、黒衣で身を包んでいる。
その中心の赤い雲模様がやけに目立った。

「…相手は人柱力だ。その袋、一つで事足りるのか?」
広漠たる砂地をずぅるりずぅるり這っている男が言葉少なに、もう一人に問う。男の歩いた跡をすぐに砂が覆っていった。

「問題ねぇ。それに、ちゃんと十八番も持ってきてる」
強く吹きつける風が黒衣を翻す。その下に差し入れた手のひらが、まるで男の心象を表わすかのように舌なめずりした。


「なんせ相手は…―――」
笠の陰から覗く瞳が獰猛に嗤う。



「『一尾』だからな」



















「…―――サソリとデイダラが?」
「ああ。一尾狩りに向かわせた」

光の一点も無い闇。
お互いの息遣いだけが唯一感じ取れる暗がりの中、男は仮面の奥で眼を細めた。感じるのは自分の息遣いだけで、相手は何も無い。
姿形はおろか、息遣いも、そして気配さえも無い。彼の完全なる“無”に、男は仮面裏で感嘆の吐息を漏らす。

「なにか、問題でも?」
「……いや。三年後と伝えたはずだが」

唯一聞こえる彼の言葉に、思い当った男は、ああ、と記憶を掘り返す。思い返せば、『木ノ葉崩し』にて彼は一度接触していた。
「仕方がないだろう。事態は急を要する。それにあの時は一尾・九尾、双方捕らえるに骨が折れるのはこちらも解っている。大蛇丸まで出張っていたしな」


かつて組織に所属していた大蛇丸の名を口にして、眉間に皺を寄せる。相手の望む答えとは的外れな返事をして
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