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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十七話 転機
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宇宙暦 794年 10月22日  宇宙艦隊総旗艦 アイアース エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



眼が覚めると目の前には白い天井が映っていた。多分病室だろう、病室の天井というのはどういう訳か白が多い。起き上がろうとして右の肩が痛んだ、思い出した、俺はイゼルローン要塞で撃たれた。痛むのはその傷だ。

「大佐、ヴァレンシュタイン大佐、目が覚めたんですね」
サアヤの声だ。横を向くとサアヤが座っているのが見えた。ラインハルトの前から立ち去った後の記憶が無い。どうやら俺は気を失ったのだろう。出血による意識不明か……。あまり自慢にはならんな。うんざりだ。

サアヤが俺の顔を覗き込んできた。酷い顔だ、目の下に隈が出来ている。これじゃパンダだ。
「此処は、何処です?」
「総旗艦、アイアースです。大佐は、撤退中に気を失いました。覚えていませんか?」
俺は無言で首を横に振った。気を失ったんだ、覚えているはずがないだろう……。

「どのくらい寝ていました?」
「今日は二十二日です。大佐は約一日半、寝ていました」
一日半か……。結構眠っていたようだ。サアヤが医師に連絡を入れている、そして艦橋にも連絡を入れているのが聞こえた……。確認する事が有る、しかし、先ずはサアヤが連絡を追えるのを待つか……。

「撤退作戦はどうなりました」
連絡を終えたサアヤに問いかけた。
「問題なく終了しました、第一次撤退も、私達の第二次撤退も敵の攻撃を受けることなく撤退しました」

サアヤの表情には笑みが有る。嘘ではない様だ。撤退作戦は問題なく終了した。つまりロボスの解任はその点に関しては間違っていなかったという事になるだろう。問題は戦闘がどうなったかだ……。

「戦闘はどうなりました?」
「本隊は撤退作戦の支援に全力を注ぎました。味方に大きな損害は出ていません。当然ですが敵にも大きな損害は有りません」
サアヤの顔から笑みは消えたが嘘はついている様子は無い。敵に損害を与えられなかったのが残念だという事だろう。ほっとした、思わず溜息が漏れた……。

「大尉はずっとここに居たのですか?」
「ええ、ご迷惑でしたか?」
「いえ、そんな事は有りません。疲れただろうと思ったのです。私は大丈夫ですから休んでください」

俺の言葉にサアヤは嬉しそうに笑みを漏らした。そして医師の診断が終わったら休みます、と答えた。全く酷い顔だ、自分がどんな顔をしているのかもわかっていないのだろう……。

医師が来た。三十代前半のようだが息を切らしている。走ってきたのかもしれない。サアヤが席を外すとそこに座りいきなり俺の脈を計りだした、俺は肩を撃たれただけだ、脈なんか計ってどうする? そう思っていると出血が多かったとか、俺の身体が丈夫じゃないとか、休息をちゃんと取れと
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