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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十五話 秘密
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を見る度にオフレッサーの声が耳に聞こえてくる……。

“用兵家としての力量以前の問題だ”

“あの男は誰かのために命を投げ出すことが出来る。そしてあの男のために命を投げ出す人間が居る……。そういう男は手強いのだ、周りの人間の力を一つにすることが出来るからな”

“卿にそれが出来るか?”

“卿とあの男の勝敗は能力以外のところでつくかもしれんな……”

そしてその度に自分を殺せと言ったヴァレンシュタインの穏やかな顔が浮かんでくるのだ。何度追い払っても浮かんでくる。今、こうして病室に向かう時でさえ浮かぶ、何故彼はあんな顔が出来たのか……。

「ミューゼル准将」
「リューネブルク准将……」
気が付けば横にリューネブルクが居た。どうも最近考え事をしていて周囲に注意が向かない。気を付けなければ……。

「どうした、浮かない顔をしているが」
リューネブルク准将が気遣うような表情で俺を見た。煩わしいとは思うが無下には出来ない。彼が俺を親身に心配しているのが分かる。そんな人間は俺の周りには何人もいない。

「いや、オフレッサー閣下に言われたことを考えていた」
「そうか……」
「よく分からない、分からないが気になる。無視できない……」
俺の言葉にリューネブルクは笑い出した。

「当然だ、相手は卿が生まれる前から戦場にいるのだ。卿に見えないものが見えても不思議じゃない」
「……」

「所詮は野蛮人、とでも思ったか?」
リューネブルクが皮肉な笑みを浮かべて俺の顔を覗き込んだ。
「そういう訳ではない、……だがどこかで軽んじていたかもしれない」
リューネブルクが笑い声を上げた。そして俺の肩を叩く。

「気を付ける事だ、ヴァレンシュタインも手強いだろうが、閣下も手強い、甘く見て良い人物じゃない」
全く同感だ。人はみかけによらない、オフレッサーは石器時代の勇者では無い。俺は黙って頷いた。

キスリングの病室の前には装甲擲弾兵が二人、護衛に立っていた。俺達が近づくと敬礼をしてきた、答礼を返す。
「既に総監閣下は中でお待ちです。どうぞ」
護衛はその言葉と共にドアを開けた。

病室にはベッドに横たわる男とその横で両腕を組んで椅子に座っているオフレッサーが居た。俺達が中に入るとオフレッサーが無言で頷いた。傍に近づくと
「礼はいらん、卿らの事は話してある、適当に座れ。キスリング少佐も見下ろされるのは好むまい」
と太い声で言った。

リューネブルクと顔を見合わせ病人を挟む形でオフレッサーと向き合う。それを見届けてからオフレッサーが口を開いた。
「キスリング少佐、何が有ったか覚えているか?」

「反乱軍が要塞に侵入してきました。それを迎え撃ちましたが、突然脇腹に痛みが走って気を失いました」
キスリングが顔を顰
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