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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十話 マルコム・ワイドボーン
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ュッケンベルガーの責が問われなかった事は俺達の責任問題にも影響した。責任を問わず、次の会戦で雪辱させるべし……。当然武勲を上げなければ今度は責任を問われるだろう。ミュッケンベルガーも俺達も……

「ヴァンフリート4=2の敵のこと、聞いたか?」
「いや」
「情報が遅いな」
「……」

情報が遅い、耳が痛い言葉だ。分かっている、キルヒアイスが居なくなった所為だ。これまではキルヒアイスが俺を助けてくれた。だが今では全てを自分でやらなければならない。その事の弊害が出ている。早急に有能で信頼できる副官が要る。しかし、そんな人物が居るのか……。

「エーリッヒ・ヴァレンシュタインがあの基地に居たそうだ」
「ヴァレンシュタイン……、あの男が……」
「? 会った事でもあるのか?」
リューネブルクが訝しげな表情で尋ねてきた。

「一度見た事が有る、第五次イゼルローン要塞攻防戦で一緒だった。イゼルローンへは補給状況の査察で来ていたと聞いている」
「なるほど、その時に亡命したか」
リューネブルクが二度、三度と頷いている。

「反乱軍の並行追撃作戦を見破って要塞司令官クライスト大将、駐留艦隊司令官ヴァルテンベルク大将に進言したらしい。もっとも二人は無視したと聞いているが……。兵站出身なのに出来る男が居るものだと思った。あの男がヴァンフリート4=2に……」

「おい、ミューゼル」
「?」
肩をリューネブルクに掴まれた。リューネブルクが厳しい顔をしている。

「ヴァレンシュタインが反乱軍の並行追撃作戦を見破った、というのは本当か?」
「ああ、そう聞いている」
益々表情が厳しくなった。

「余りその事は言わんほうが良いぞ」
「?」
「あの亡命には不審な点があると聞いた事がある。ある士官を殺害して逃げたらしいがその理由がはっきりしないらしい。あるいは口封じだったのかもしれん」

リューネブルクの声が小さくなった。口封じ? クライスト、ヴァルテンベルクの二人が隠蔽工作を行ったという事か?
「並行追撃作戦の可能性を知りながら無視した。それによって味方殺しが発生した。それが上に知られれば……。分かるだろう?」

「クライスト、ヴァルテンベルク大将はあの後、味方殺しの責任を取らされてイゼルローン要塞の防衛から外されている。考えすぎだと思うが?」
「並行追撃作戦の可能性を指摘した士官が居るとは聞いていない。それが事実なら軍法会議ものだぞ」

「……」
「ありえない話じゃない、あまり周囲には話さんことだ」
「分かった、気をつけよう」

リューネブルクは頷くと肩から手を離した。ヴァレンシュタイン、たとえどんな理由があろうとキルヒアイスを殺したのはお前だ。そのことは変わらない、俺は必ずお前を殺す……。



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