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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十九話 帰還
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「少佐は昇進と共に異動になります。今度の配属先は宇宙艦隊司令部の作戦参謀です。私も同じところに配属が決まりました」
「……」
「最初の任務はイゼルローン要塞攻略戦になるそうです」

少佐は無言でした。軍の上層部は少佐を前線に送ろうとしています。ある意味止むを得ない部分もあるのです。少佐を後方勤務本部に置けば何故軍はヴァンフリートの英雄を前線に出さないのかと市民の批判を受けるのは間違いありません。

前線に行くとなれば宇宙艦隊司令部というのは比較的安全な場所です。ただヴァレンシュタイン少佐にとって居心地は良くないかもしれません。私にとってもです。

今回のヴァンフリート星域の会戦で全く活躍しなかった人物が二人います。一人は第六艦隊司令官ムーア中将、そしてもう一人は宇宙艦隊司令長官ロボス元帥です。

開戦直後、繞回進撃を試みた事で同盟軍は混乱しました。その混乱の中で第五艦隊のビュコック提督、第十二艦隊のボロディン提督はヴァンフリート4=2に来援、帝国軍を撃破しました。ですがその間、第六艦隊司令官ムーア中将とロボス元帥はヴァンフリート星域を当ても無く彷徨っていたのです。

当然ですがロボス元帥に対する評価は散々なものです。
“迷子の総司令官”
“総司令官が居ないほうが同盟は勝てるんじゃないか”
戦争そのものは勝ったので進退問題にはなりませんが周囲からは笑われています。

大勝利だったのです。もしヴァレンシュタイン少佐が基地に居らず、ロボス元帥が宇宙艦隊を率いてヴァンフリート4=2に来援していれば、帝国軍を撃ち破っていれば、ロボス元帥の功績として認められたでしょう。その場合、シトレ元帥は勇退しロボス元帥の統合作戦本部長への昇進も認められたかもしれません。

しかし、現実にはヴァンフリート星域の会戦の勝利の立役者はヴァレンシュタイン少佐です。当然ですが少佐を登用したシトレ元帥の立場は強化されました。ロボス元帥にとってヴァレンシュタイン少佐は目障りなシトレ元帥の手下にしか見えないと思います。

少佐も同じような事を考えたのでしょう。呟くように声を出しました。
「ライバル争いですか、馬鹿馬鹿しい。いい迷惑だ」
「……少佐、イゼルローン要塞は攻略できますか?」
「……」

私の問いに少佐は無言でした。黙って天井を見ています。
「少佐はイゼルローン要塞は後方に一つぐらい基地が有ったからといって落ちる程ヤワな要塞じゃないと仰いました。やはり無理なのでしょうか?」
「……」

答えは有りません、やはり無理なのか、それとも答えたくないのか……。諦めて帰ろうとしたときです。
「イゼルローン要塞攻略のカギを握るのは同盟では有りません、帝国でしょう」
「……」

カギを握るのは帝国? どういう意味なのか……、聞こ
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