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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十六話 疑惑
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ません。

私とヴァレンシュタイン少佐、バグダッシュ少佐はハイネセンに戻る事になりました。元々帝国軍がヴァンフリートに来襲するからという事で臨時に基地に配属された私達です。帝国軍を撃退した以上、ハイネセンに戻るのは当然といえるでしょう。

もっとも私達をハイネセンに運ぶのが第五艦隊というのは異例です。本当なら輸送船で移動なのに帝国軍への追撃を終了した第五艦隊が私達をハイネセンに運ぶ……。

第五艦隊は今回帝国軍を打ち破った殊勲艦隊です。その第五艦隊がわざわざヴァンフリート4=2まで私達を拾うためにやってくる……。統合作戦本部からの命令だそうですが全くもって特別扱いです。

少佐の帰還を誰よりも残念に思ったのはセレブレッゼ中将でしょう。中将の少佐への信頼は基地防衛戦以降、益々厚くなりました。少佐がヴァンフリート4=2の戦後処理を一手に引き受けて行なったからです。

死体の収容、撃破された装甲地上車、艦隊の残骸の撤去、そして消費した物資の補充の手配……。セレブレッゼ中将の手を煩わせる事無く少佐は全てを差配し、中将も何一つ口を挟む事無く少佐に全てを任せました。

それらを通して中将は少佐が用兵家としてだけではなく、後方支援能力、事務処理能力にも優れている事を確認したのだと思います。或いは自分の後継者に、と考えたのかもしれません。それほど中将の少佐に対する信頼は厚いものでした。

「では少佐、気をつけてな。例の約束を忘れんでくれよ」
「はい、有難うございます。閣下もお気をつけて」
「うむ」

例の約束? 一体何の事かと思いましたが、中将も少佐もお互いに穏やかな表情を浮かべています。やましい事ではないのでしょう。敢えて詮索する事は止めようと思います。私は少佐を必要以上に疑いたくありません、信じたいんです。

第五艦隊からは連絡艇が基地に来ています。私達はその連絡艇に乗り第五艦隊旗艦、リオ・グランデに移りました。艦橋に案内されビュコック提督が直ぐに私達に会ってくれました。艦橋にはヤン中佐も居ます。一通り挨拶が終わった後、ビュコック提督がヴァレンシュタイン少佐に話しかけました。

「貴官がヴァレンシュタイン少佐か、心から歓迎するよ」
「有難うございます、提督」
「今回の戦では貴官には随分と世話になった。対空防御システムで敵を叩いてくれなかったら危ないところだったよ」

ビュコック提督はヴァレンシュタイン少佐を高く評価しているようです。提督は明るい表情でヴァレンシュタイン少佐を見ていますし少佐も穏やかな笑みを浮かべています。どうも少佐は同年代の人よりかなり年長の人に対して心を開くようです。

「ハイネセンまでは二十日以上かかるだろう、ゆっくりしてくれ」
「有難うございます、提督」

私達を部屋に案内してくれたのは
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