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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十五話 心が闇に染まりし時
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ンを見ている。そしてヴァレンシュタイン少佐は一人苦笑していた。

「手強いですね、もう少し勝利にこだわるかと思いましたが……。ヘルマン・フォン・リューネブルク、予想以上に手強い。それともミューゼル准将が説得したか……」

その言葉にようやく帝国軍が撤退したという実感が湧いたのだろう。司令室の中に歓声が上がった。セレブレッゼ中将も顔をほころばせている。喜びに沸く司令室の中で通信オペレータが声を上げた。

「ローゼンリッターのヴァーンシャッフェ大佐が追撃の許可を要請しています」
「第五十二制空戦闘航空団司令部もです」
セレブレッゼ中将が困ったような表情を少佐に向けた。 中将は敵を撃退した、基地を守った、それだけで満足しているのかもしれない。

「閣下、現状にて待機するようにと命じてください」
「うむ、現状にて待機」
中将の言葉をオペレータがヴァーンシャッフェ大佐、第五十二制空戦闘航空団司令部に告げた。その瞬間だった、司令室のスクリーンの一つにヴァーンシャッフェ大佐が映った。

「司令官閣下、攻撃の許可を頂きたい!」
「……」
「リューネブルクは我々にとって不倶戴天の仇です。我々にリューネブルクを倒す機会を頂きたい!」

セレブレッゼ司令官が困ったようにヴァレンシュタイン少佐を見た。ヴァーンシャッフェ大佐が言葉を続けた。
「ヴァレンシュタイン少佐、貴官からも司令官閣下に口添えしてくれ。我々ローゼンリッターはあの男と決着をつけねばならんのだ!」

先代の連隊長、リューネブルクが帝国に亡命して以来、軍上層部のローゼンリッターを見る眼は冷たい。同盟を裏切ったリューネブルクを倒せば、ローゼンリッターに対する周囲の目も変わる。おそらくヴァーンシャッフェ大佐はそう考えているのだろう。

「敵が撤退するのに何の備えもしていないとは思えません。今の時点でリスクを犯す必要は無いと思いますが」
「第五十二制空戦闘航空団と共同すればリスクは少ないはずだ。そうではないか、少佐」
どうやら大佐は第五十二制空戦闘航空団と示し合わせてこちらへ連絡してきたらしい。

「……敵地上部隊に対する攻撃は味方艦隊の増援が来てからです。それまでは攻撃は許可できません。また攻撃は戦略爆撃航空団が行ないます」
一瞬の沈黙の後、ヴァレンシュタイン少佐の口から出された言葉はヴァーンシャッフェ大佐には無情なものだった。

「それでは我々ローゼンリッターの名誉は」
逆上するヴァーンシャッフェ大佐にヴァレンシュタイン少佐が冷酷といって良い口調で答える。

「ヴァーンシャッフェ大佐、私が戦うのは勝つため、生き残るためです。名誉とか決着とか、そんな物のために戦うほど私は酔狂じゃありません。司令官閣下への口添えなど御免です」
「少佐!」

スクリ
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