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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十三話 兵は詭道なり
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ヴィオラ大佐か、あの空気デブにそんな芸当が出来たのか……。一本取られたな、フェザーンの首席駐在武官は伊達ではなかったという事か。バグダッシュを睨んでいるサアヤを見ながら思った。世の中は驚きに満ちている……。馬鹿馬鹿しいほど可笑しくなった。

「話を戻しましょう、何故、戦略爆撃航空団を使わないのか、でしたね?」
「そうです。あれを使えば簡単に勝敗が付いた。今でも圧倒的に優勢ですが犠牲は出ている。何故です?」

スクリーンに単座戦闘艇(ワルキューレ)が映った。対空迎撃システムを避けるためだろう、低空飛行をしている。そしてその上から単座戦闘艇(スパルタニアン)が襲い掛かった。一機、また一機と撃墜されていく。到底基地への攻撃など出来まい。

「簡単に勝敗が付く、それが問題なのですよ」
「?」
二人とも訝しげな表情をしている。困った奴らだ、戦闘に勝つのと戦争に勝つのは別だという事が理解できていない。局地戦で勝っても戦争全体で見れば負けるなんて事は良くある事だ。

「戦略爆撃航空団が有る以上、地上攻撃は簡単に成功しない。グリンメルスハウゼン艦隊がそう判断すれば、彼らは艦隊を基地の上空に持ってきて攻撃をするでしょう。対空迎撃システムは有りますが、それでも一個艦隊による上空からの攻撃では持ちません。基地は破壊されます」
「……」

「戦略爆撃航空団を使うのは、味方の艦隊がヴァンフリート4=2に来てからです。彼らにグリンメルスハウゼン艦隊を攻撃させ、こちらは敵の地上攻撃部隊に対して戦略爆撃航空団を使って攻撃を加える。それまではこのままで行くしかありません。それ以外に勝つ方法は無いんです」

だからあの馬鹿げた救援要請を出しているのだ。グリンメルスハウゼン艦隊に自分達が優勢に攻めていると勘違いさせる。勘違いしている限り奴等は動かない。有り難い事にリューネブルクもラインハルトもあの艦隊の中では嫌われているし信用もされていない。

兵は詭道なり……。詭道とは人をいつわる手段、人をあざむくような方法を言う。騙すほうが悪いのではない、騙されるほうが悪いのだ。何故なら騙される事によって何十万、何百万という犠牲者が出るのだから……。




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