暁 〜小説投稿サイト〜
魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
外伝
外伝『雷禍と凍漣〜竜具を介して心に問う』
[1/8]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
概ね常識や原則というものを、ソフィーヤ=オベルタスは信じない。
今日の河川が高きから低きに流れているからといっても、明日も同じとは限らない。
一夜で水が枯れて幅が狭くなり、土砂をまき散らす大崩壊を招くこともある。
天からの未知な豪雨が侵入して、河川を逆流させてしまうこともある。
それに比して類することを、数々の交渉時にて、ソフィーヤはいやというほど学ばされてきた。
光華の耀姫―ブレスヴェートの二つ名をもつ彼女にとって、経験とはそういうものだ。

『そちらの治水に問題があった』
『そっちが川の管理をまともにしないから』

故に思案する。ディナントの戦いの発端となった、両者の言い分は考慮に値すべきではないと。
無論、村人の仲介としてしゃしゃり出たブリューヌとジスタートの、その首脳陣とて例外ではない。
だから、ソフィーヤはこれらの事を欠かさないのだ。

見ること。事実を、その両目で。

聞くこと。事象を、その両耳で。

感じること。時代を、その感性で。

確認すること。現実を、その瞳の光で。

重ねて確証をとること。未来を、その光の輪郭で。

それらのことを怠らない者だけが、天なる太陽のように、さらなる高みへと輝けることを、ソフィーヤ=オベルタスは知っている。





『雷禍と凍漣〜竜具を介して心に問う』





『ジスタート・王宮庭園・夕刻間際』





――ソフィーがエレオノーラとの密談を終えて約半刻後――





ソフィーヤ=オベルタスはヴァレンティナ=グリンカ=エステスとの会話を終えて、一人廊下を歩いていた。理由は、サーシャの伝言をリュドミラに教えるためだ。時間をずらして、あえてエレンとの同席を避けたのは、二人の険悪な関係を考慮しての事だった。
一つの匠のテーブルに置かれるのは、3杯のティーカップ。相対するのは凍漣と雷禍と光華の竜具の主様だ。一同に合した理由は、今後のお互いの動きを確認する為だった。
最初に、口につけたのはリュドミラ=ルリエ。毒の有無を証明する為に、優雅な口づけにて喉を潤す。それに続いてソフィーもまた一口いただく。

「おいしい……いつもあなたの淹れてくれる紅茶はとてもおいしいわ。ミラ」

そんなソフィーの感想に、リュドミラ――ミラは顔をほころばせた。
残るもう一人の戦姫、エリザヴェータ――リーザはミラの淹れてくれた紅茶に口をつけず、じっとミラの顔を見据えていた。

「どうしたの?別に毒なんて入っていないわよ」
「貴方には……何か入っているのではなくて?」
「いきなり失礼な態度ね。確かに私のものはシュガーが多めに入っているけど、私の甘党がそんなに気に入らないかしら?」

旗から見れば「そっちのほうが多いからこれと
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ