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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九話 獅子搏兎
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取りました。バグダッシュ少佐は私達がヴァンフリート4=2に行く事を知っています。ヴァレンシュタイン少佐が怒っている事もです。

『それで、何の用かな、中尉』
「実は今回、私とヴァレンシュタイン少佐はヴァンフリート4=2に行く事になりました」
『そうか、大変だな』

「それでヴァレンシュタイン少佐が帝国軍の遠征軍の艦隊編制、将官以上の地位にある人間のリストを頂きたいと……」
『将官以上? 正気か? どれだけ手間がかかると思っている』
お願いです、そんな呆れたような声を出さないでください。困った事にバグダッシュ少佐からはヴァレンシュタイン少佐が見えません、私は身を竦めました。

「ミハマ中尉、通信を切りなさい」
ブリザードが吹雪きました。スクリーンに映るバグダッシュ少佐の顔が驚愕に歪みます。
『彼が其処に居るのか?』
小さな声でした。私も小さな声で答えました。
「はい……」

「私も中尉も戦場に行くんです、少しでも生き残る可能性を高くしておきたい。しかしハイネセンで陰謀ごっこをしている人達にはそのあたりが理解できないようです。話すだけ無駄です、切りなさい」

ヴァレンシュタイン少佐の声だけが部屋に響きます。嘲笑も揶揄も有りません、その声には切り捨てるような冷たさだけが有りました。周囲の人間も皆、顔を伏せています。誰も私達のほうを見ようとはしません。どこかでTV電話の呼び出し音が鳴りました。でも誰も出ようとしません。補給担当部はヴァレンシュタイン少佐の前に凍りついています。

『待て、ヴァレンシュタイン少佐』
「話はヴァンフリート4=2から戻ってから聞きます。生きていればですけどね」
声に冷笑が有りました。その事が更に私の身を竦ませます。
『よ、用意しよう、貴官がハイネセンを発つ前に必ず届ける、必ずだ』
「二週間です。それ以上は待てません。よろしく御願いします」
『分かった』

バグダッシュ少佐は逃げるように通信を切りました。ずるいです、少佐。私も逃げたい……。少佐はヴァンフリート4=2の地図、そして基地の設計図を見ています。そして時折溜息を吐く。私への指示はヴァンフリート4=2への輸送計画の作成でした。

こんな膨大な量の物資の輸送計画なんて私には無理! そう思ったけど口答えは出来ません。途方に暮れながら過去の輸送計画を参考に仕事を始めました。ヤン中佐が補給担当部に来たのは二時間程経って頃です。もっと早く来てください、中佐。今の少佐と仕事をするのは辛いんです。

ヤン中佐が部屋に入ってくるとヴァレンシュタイン少佐は中佐を会議室へ案内しました。私も会議室に呼ばれたけど正直勘弁して欲しいです。ヤン中佐とヴァレンシュタイン少佐は必ずしも上手くいっていません。どちらかと言えばヤン中佐がヴァレンシュタイン少佐を
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