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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七話 切なさと温かさ
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。遠巻きにして見ています、聞き耳を立てているだけです。

その状態はパーティが始まっても変わりませんでした。大尉はにこやかに笑みを浮かべながらオレンジジュースを飲んでいます。未成年だからお酒を飲まないのではありません、パーティ会場は敵地だからと言ってヴィオラ大佐が忠告してくれたのです。だから私もオレンジジュースを飲んでいます。

しばらくしてからでした。大尉が突然“踊りましょう”と私を誘いました。ちょっと戸惑ったけど小声で“婚約者らしくしてください”と大尉に言われては断われません。ホールに出て一曲だけダンスを踊りました。

踊り終えてホールから戻ってくると大尉が私に話しかけてきました。
「それにしても帝国人というのは女性に対するマナーがなっていませんね、貴女にダンスを申し込んでくる人間が一人も居ない、失礼な話です」

決して大きな声ではありません、でも聞き耳を立てている周囲には十分に聞こえる声だったと思います。直ぐに私達に声をかけてきた男性が居ました。
「ヴァレンシュタイン大尉、そちらのフロイラインにダンスを申し込みたいのですが?」

ダンスを申し込んできたのは長身の若い軍人でした。砂色の髪と砂色の瞳が印象的な士官です。結構イケメン、優しそうな表情をしています。
「貴官の名は?」
「申し遅れました、小官はナイトハルト・ミュラー中尉です」

ヴァレンシュタイン大尉は私とミュラー中尉を見て頷きました。ミュラー中尉に許したのか、それとも私に対して踊って来いという事なのか、よく分からないでいるとミュラー中尉が私をホールへと誘ってきました。

良いのでしょうか? 私達がダンスをしている間に大尉が誰かと接触したら? さっきの大尉の言葉はそのため? 有り得ない話じゃありません、そう思って躊躇っていると
「大丈夫ですよ、心配は要りません。楽しんでいらっしゃい」
と大尉の声が聞こえました。その声に押されるように私はミュラー中尉とホールに向かいました。

ミュラー中尉と踊り始めたけど私は大尉の事が気になって仕方がありません。本当に大丈夫? そう思っているとミュラー中尉の声が聞こえました。
「フロイライン、貴女は本当にエーリッヒの婚約者なのですか?」
「……エーリッヒ?」

思わずミュラー中尉の顔を見てしまいました。中尉は穏やかに微笑んでいます。エーリッヒ? 大尉の事? この人、大尉の知り合い?
「どうやら違うようですね。まあ、あの朴念仁にそう簡単に恋人ができるわけが無いか……」
「あの、ミュラー中尉、貴方は……」

「エーリッヒとは士官学校で同期生でした。彼は私の親友です」
「……」
「エーリッヒは皆に受け入れられていますか?」
「ええ」
嘘じゃありません、後方勤務本部の女性兵士は皆彼に夢中だもの。

「そ
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