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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五話 パンドラ文書
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震え始めた。ミハマ少尉が送ってきたレポートは大きく分けて三つの構成からなっている。最初にアルレスハイム会戦の詳細、次にヴァレンシュタイン中尉とミハマ少尉との会話、最後にミハマ少尉によるヴァレンシュタイン中尉への観察……。

「冗談だろう! 全て分かっていたというのか! 今回の騒ぎは俺と大尉に対する仕返しだと!」
最後まで読んではいないだろう。というより最後まで落ち着いて読む事のできる人間が居るとは思えない。レポートは大佐の手でクシャクシャになっている。

落ち着かせなくてはならない。
「この報告書は一昨日、情報部に届きました。当然ですが情報部だけではなく、憲兵隊、監察にも、シトレ本部長にもコピーが渡されました」
「シトレ本部長にも?」

俺は黙って頷いた。大佐は首を括って自殺しそうな表情をしている。気持は分かる、俺もこのレポートを読んだ時には死にたくなった……。
「彼方此方で怒号と悲鳴が起きましたよ、シトレ本部長は机を叩いて激怒したそうです」
「……」

パンドラ文書だ、この報告書には災厄が詰まっている。報告書を読んだ人間は全てを呪い恨むだろう。そして何故この文書を読んだのかと後悔することになる。パンドラの箱には希望が残ったが、この文書には希望など欠片も無い。エーリッヒ・ヴァレンシュタインとミハマ・サアヤ、事件関係者にとってこの二人の名前は今や災厄と同義語だ。

「無理も有りませんよ、軍内部をまとめ、警察対策、政治家対策を考えている最中にこの事件が我々に対するしっぺ返しだと分かったんですからね」
「死にたくなってきた……」
頼むから死なないでくれ、大佐が死んだら俺まで後を追わなきゃならなくなる。俺はまだ死にたくない。

「有り得るのか、こんな事が……、彼は未だ十七歳だろう。士官学校を卒業して二年に満たない。その彼が同盟軍を振り回している」
「……」

「これからどうなる?」
「このままです。確かにヴァレンシュタイン中尉の狙いは我々に対するしっぺ返しかもしれません。しかし、同盟軍の上層部にスパイが居る可能性がなくなったわけではありません。彼にとっては遊びでも我々にとっては重大な問題です」

情報部でも憲兵隊でもヴァレンシュタイン中尉の危険性を訴え、彼の排除を声高に叫ぶ連中が出た。しかしヴァレンシュタインは可能性を指摘したのだ。それがどんな動機からだろうとその可能性を否定はできない。

ヴァレンシュタイン中尉が指摘しなければ第四艦隊は何も気付かずに終わった可能性が高いのだ。それを思えばヴァレンシュタインは同盟に警告を発したとも言える……。

「ヴァレンシュタイン中尉の昇進が決まりました」
「昇進か、ヴァレンシュタイン大尉になるのか……」
何処となく面白くなさそうだ。無理もない、俺も必ずしも面白いとは思
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