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エターナルユースの妖精王
マスター現る!
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と、そんなこんなでデートの誘いを往なしたミラの目が、ギルドの扉の方を向く。ぽわ、と変身を解きながら、見えた姿に「あ」と声を上げる。

「ただいまー!!!!」
「ただー」

目を吊り上げ、勢い任せに駆け込んでくるナツと、その足元でマイペースに手を上げるハッピー。その横には満面の笑みのルーシィと、喧しいのが嫌なのかむわりと香る酒の匂いが嫌なのか、顔を顰めるニアがいる。

「ナツ、ハッピー。おかえりなさい」
「またハデにやらかしたなあ、ハルジオンの港の件……新聞に載……て」

大きく笑い声を上げながら、ジャージを着た出っ歯がナツに声をかけた、が。

「てめェ!!!火竜(サラマンダー)の情報ウソじゃねェかっ!!!」
「うごっ」

黒い、楕円のような形の何かが見えた、と思ったら体が思いっきり吹っ飛んでいた。見えたそれがナツのサンダルの裏だと判断するより前に、ナツの怒りがヒートアップする。テーブルがあるとか他にも人がいるとかお構いなし、容赦なく巻き込んでいく。

「あら……ナツが帰って来ると、早速お店が壊れそうね」
「壊れてるよ―――!!!」

そしてミラは笑っていた。うふふ、なんて声を漏らしてさえいる。これには先ほどのリーゼントも思わずツッコミを入れて、目の前で始まった喧嘩にニアは絶句していた。

「誰かナツ止めろー!!」
「ぎゃふっ」
「てめ……ナツ……」
「痛て……ハッピーが飛んで来た」
「あい」

帰って来てからまだ三分も経っていないだろうに、気づけばテーブルがいくつも壊れている。喧嘩の周囲では数人が囃し立て、一人ずつ巻き込まれてはお返しと言わんばかりに自分から混ざっていく。ナツが顎を蹴り飛ばし、ハッピーが顔を横に引っ張られ、巻き添えを喰らった誰かが苛立ったように拳を振り上げる。

「凄い…あたし、本当に…妖精の尻尾(フェアリーテイル)に来たんだあ」
「これ見て再確認って…それでいいのか……?」

帰って来るなり乱闘開始、それでもルーシィの興奮を上回りはしなかったようで。
頬を染めて思わず呟いたルーシィに、水を差さないよう出来る限りの小声でニアがツッコんだ。





―――が、事態はその上を行く。ルーシィの憧れもニアの呆れも置いてけぼりに、こちらが追い付かない速度で上へ上へと事態は進む。

「ナツが帰って来たってえ!!?てめェ……この間の決着(ケリ)つけんぞ!!!コラァ」

派手な音を立ててこちらへ走ってくる青年がいた。
黒髪に垂れ気味の目、右胸に刻んだ紺色の紋章。下げた十字架のネックレスが小さく音を立てる。顔立ちは十分美青年と言って問題ないレベルだが、それ以前に問題が一つ。

「グレイ……あんた、何て格好で出歩いてるのよ」
「はっ!!!しまった!!!」

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