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霊群の杜
麒麟
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『それ、きりんとちがう!うろこついてるもん!うろこがついているのは、おさかな!おさかなさんは、うみにかえりなさい!!』
と、天下の瑞獣を衝撃的な解釈で海に戻そうとした。
「いやいや、小梅よ。魚とはかぎらない。蛇もトカゲも、鱗はついているだろう」
「へびも、とかげも、のりたくないです」
―――だよねぇ。
「もうすぐ、ママがかえってくるのよ。おさかなも、まつるも、いっしょにおるすばんする?」
と聞き、麒麟の注連縄を手に、奉を無理やり家の外に追い立て、慌てて逃げた。内側からしっかり鍵をかけることを指示してから。



「何故帰る。もう少し小梅と遊びたかったなぁ」
黒い羽織を振り回しながら、奉はとぼとぼ歩く。麒麟にはお帰り頂いたから、帰り道は徒歩だ。
「…ふざけんな。あの状況をどう説明するんだよ姉貴に。麒麟ごとぶっ殺されるぞ」
「それはいかんな。麒麟の死骸を見るのは不吉だというのに」
家をでた直後、麒麟には土下座で謝り、渋る奉を黙らせて縄を解いた。麒麟は燐光を放って消えた。
「あーあ…俺、あれに跨って走ってるの近所の人に見られたよ絶対…」
「大丈夫だ。ああいった場合、彼らは各々の常識に沿った解釈をする」
失うものがない奴は強い。俺は肩を落とした。
「麒麟違い…だったか…」
奉も、しょんぼりを肩を丸めた。
「何で瑞獣の方だと思った。動物園の話してただろ?」
「キリンきもいじゃねぇか。なぜ幼児があんな珍獣を好む。分からないことだらけだ」
麒麟の方が珍しく、かっこいいのに。あれほど苦労したのになぁ…と、口を尖らせながら奉は道中ずっと愚痴り続けていた。後で調べて知ったことだが、麒麟は色々なめでたい『兆し』が揃わないと姿を現さないという。…奴は1週間、何処で何をしていたのだろう。
「……少し疑っている…か。リアルな言い回しだなぁ」
「リアルなんだよ…お前少し自重しろよ!?」
その日は歩き過ぎて腹が減ったのでラーメン食って解散した。



後日。
近所の人は、麒麟に乗った状態の俺を『新型ロディに乗って友達とはしゃぎ回る大学生』と解釈したらしい。『各々の常識に沿った解釈』の結果、俺は馬鹿で浮かれぽんちな学生となった。…警察は呼ばれなかったが、親の知るところとなり、叱られはしなかったが数日間、微妙な目で見られ続けた。


―――俺はひっそりと肩を落とした。

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