第二章 追憶のアイアンソード
第20話 少年の意地
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る! フィオナの想いが、無駄になるッ!)
震える両足に鞭打ち、ふらつきながらも――立ち上がる。身体こそボロボロだが、その瞳は戦う前より熱く煌めいていた。
(無駄になんて、させない! 俺が、させるものかァッ!)
そして、剣を握る力が――最高潮に膨れ上がり、眼前の敵へ狙いを定める。その一点に集中された殺気を浴び、バルスレイの気力が一気に引き締まった。
(来るか!)
そう身構えるバルスレイを目掛けて、竜正は刺突の体勢で突進する。先程と変わらない様子で突撃してくる少年に対し、老将は油断することなく眼を細めた。
(刺突と見せかけて横薙ぎか。切り上げか。さぁ、来るなら来い。私も、その全力に応えて見せ――)
そして、双方の間合いが――バルスレイが届き、竜正が届かないところまで詰まる瞬間。
竜正の剣が、手元から離れ――
(――なんとッ!?)
――矢の如し速さで、バルスレイの胸を打ち抜くのだった。
「届かないのなら、届かせればいい……! そうだよな、バルスレイさんッ!」
少年は反動により跳ね返って来た剣をキャッチし、慢心することなく残心を取る。敵に油断を見せてはならない、という師の教えを真摯に受け止めている証だ。
(信じられん……! 荒削りな狙いだったとはいえ、私に教わる前から己の感性のみで投剣術を放つとは……!)
一方、胸を抑えているバルスレイは、竜正が咄嗟に見せた気転に目を見張っていた。そして、今こそ彼は確信する。
この若き勇者こそ、失われた帝国の秘剣――帝国式投剣術を受け継ぐに相応しい剣士であると。
(幼いこの少年に託すのは非情かも知れん……が。もはや、彼しかいまい。アイラックスを越えられるのは――この世界に、彼一人だ)
そして――バルスレイ将軍が一本を取られた、という非常事態を目の当たりにして静まり返っていたギャラリーを前に、老将は高らかに宣言する。
「――見たか! これぞ、我が帝国が誇る伝説の勇者の剣! この剣が我らの切っ先となり、帝国の未来を切り拓くのだ。皆の者! この若き勇者と共に、帝国の安寧を築き上げるのだッ!」
その宣言を受け、騎士達は僅かな沈黙の後――爆発するような歓声を上げる。
皆、確信したのだ。バルスレイ将軍と勇者が共に立ち上がれば、必ず王国に――アイラックスに勝てるのだと。
そして、勇者を讃える歓声を聞き――騎士達により医務室へ連れられていたフィオナは。
「勇者……様ぁ……」
自らが思慕の情を寄せる少年の勝利を知り、暖かな笑みを浮かべるのだった。
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