第二章 追憶のアイアンソード
第19話 勇者の資格
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が下りるまで、絶え間無く続いていた。
――その戦いが、ひとまずの終わりを迎える頃。
「……はぁ」
バルスレイが去った後の、荒れ果てた練兵場の中で。竜正は一人、練兵場の中心に仰向けで寝そべり、地球と変わらない夜空を見上げてため息をついていた。
(母さん、今頃どうしてるのかな……。心配、してるよな)
やろうと思えば、バルスレイの目を盗んで皇族を脅し、地球への送還を強いることも出来ただろう。だが、それをやってしまえば、あの幼い皇女は深く悲しむに違いない。
そうまでして母の元へ帰ったとして、果たして自分は耐え切れるのだろうか。いや、できない。
人を悲しませて自分だけ逃げるなんて、できない。――そんな情が、竜正をこの世界に繋ぎ止めているのだった。
「勇者様?」
「……あ、フィオナ様」
その時。竜正の顔を覗き込むように、十歳前後の幼い皇女が顔を出してきた。さらりと下に垂れた銀髪が、月光を浴びて幻想的な輝きを放つ。
――病弱ゆえ、昼間の陽射しに耐えられない彼女は、夜中にしか散歩にも出られないのだ。無論、彼女からやや離れた練兵場の隅には、護衛の近衛騎士が数人控えている。
彼らは勇者とはいえ、ぽっと出の存在でしかない竜正が気にくわないのか、彼に対しては厳しい視線を向けていた。
「そのように畏まらないでくださいまし、勇者様。……どうかフィオナ、とお呼びください」
「そ、そっか。えーと……じゃあ、フィオナ」
「はい」
皇女という地位ゆえに、対等な友人などいなかった彼女にとって、竜正の存在は非常に大きいものであった。それゆえに彼女は、呼び捨てにされた瞬間――月明かりにも勝る美しい笑顔を、彼に向けるのである。
「勇者様、今日もお疲れ様でしたね。でも、あと一息ですわ。今まで涼しい顔をされていたバルスレイ将軍が、初めて汗をかいていらしたもの。城の窓から見ても迫力が伝わるほどの、接戦でしたわ」
「勝てなきゃ意味ないさ……。早くバルスレイさんに、認めてもらわないとなぁ。」
「……一日でも早く、お母様の元へ帰るため、ですか?」
「ああ。……きっと、母さんも心配してるから」
そう語る竜正の目には、眼前の美少女ではなく――視界に広がる夜空の、遙か彼方に在るであろう自分の世界が映されていた。
一方、フィオナはそんな彼の様子に顔色を曇らせていた。戦争が終われば、彼はこの世界からいなくなってしまう。そう考えてしまったからだ。
「それよりさ。君も、俺のこと勇者様って呼ぶの、やめなよ。別に俺、まだ勇者として認められたわけでもないらしいからな。『勇者の剣』ってのを貰って、初めて正式に認められるんだろ?」
「確かにそうですが……しかし、私にとって勇者様は既に、本当の勇者様なんです」
「本当
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