第二章 追憶のアイアンソード
第18話 勇者召喚
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間が傷を癒してくれたのか、少しだけ元気を取り戻していた母と、いつも通りの挨拶を交わす。
「じゃ、行ってきます」
「えぇ。……行ってらっしゃい。気をつけてね」
「……うん」
そして、微かな笑みを浮かべる母の顔を、その目に焼き付けて――家を出た瞬間。
まばゆい光が一瞬にして、少年の目の前を覆い尽くす。
「なッ、なんだッ!?」
余りの輝きに、目を覆う少年。気づけば、周囲の景色も全て、白い光に遮断されていた。
「か、母さんッ!」
何が起きたのか、判断する暇もなく。彼は、すぐ近くにいる――はずの、母を呼ぶように叫んだ。
しかし。その声が母に届くことはない。彼が今いる世界は、私達が暮らしている世界とは……遠く離れているのだから。
「――え? こ、ここは!?」
そう。ここはもう、地球ではない。
「おぉ……成功したのか!」
「あの少年が、伝説に伝わる異世界の勇者なのか!」
「これでようやく、戦争が終わる……! 私の息子も、遠征から帰れるぞ!」
煌びやかな装飾で全てを彩る、帝国の皇室。帝国中の名士が集まる中、決行された勇者召喚の儀式の、現場なのだ。
「なんだ……! なんなんだよ、ここは!?」
震える声を漏らしながら、少年は戸惑いの表情で辺りを見渡す。高貴な服装に身を包む、見知らぬ男達がざわめきながら、好奇の目で自分を見つめている状況に、少年は混乱していた。
(異世界!? 勇者!? 伝説!? この人達、さっきから何を言ってるんだ!?)
家を出た瞬間、目の前に現れた光に目を瞑ったと思えば、こんなところにいる。そんな現実離れした事象に、少年の理解は全く追いつかないままだったのだ。
「――皆の者、静粛に。神より遣わされた勇者の御前であるぞ」
そうして絶え間無く続く男達の声に、少年の理性が耐え切れなくなる直前。
荘厳な男性の声が響き渡り――瞬く間に、この場を静寂に包ませてしまった。
「……!?」
その声の主――艶やかな装束に身を包む初老の男性は、少年を見つめながら静かに歩み寄る。その隣に、同様の装束を纏う一人の少女を伴って。
周囲の人間は、その男性と少女が進む道を畏れるように明け渡していった。その様子を見れば、彼らのことを全く知らない少年でも二人がどういう人物なのかは理解できる。
(この人が、この中で一番偉い人……なのか?)
彼ら二人が、この状況を説明してくれるのだろうか。あるいは、この夢の世界のような場所なら出してくれるのだろうか。
そんな微かな希望を頼りに、少年はこちらに近づく彼らに、助けを求めるような視線を送る。
「お初にお目にかかる。余は、この帝国を治める皇帝である。異世界の勇者殿、遥か遠い世界から、よ
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