第二章 追憶のアイアンソード
第14話 ある日の稽古
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――ある日の夕暮れ。
王宮内の、練兵場にて。
「うぉおおおぉおッ!」
一人の騎士が雄々しい叫びを上げていた。
「彼女」の気勢に乗せて放たれる斬撃は、眼前の仇敵を正確に捉え――
「……惜しい」
「あうっ!?」
――あっさりと、いなされてしまう。
赤い制服と、赤い縁に彩られた鋼鉄の鎧を纏う、黒髪の騎士。その仇敵に受け流された一閃は空を斬り、正規団員用の証である青い柄の剣は、勢いのまま持ち主の手から離れてしまう。さらに持ち主であるローク自身も、つんのめるように転んでしまった。
そんな彼女――ロークの剣が、宙を舞って地に突き刺さる瞬間。この戦いは、終幕を迎える。
赤いマフラーを巻いた、黒髪の騎士……即ちダタッツは、ロークの手元から離れた剣を一瞥すると、静かに彼女へ歩み寄る。その表情は戦いの最中と変わらない穏やかなものだったが、相対するロークの面持ちは険しさを保っている。
そうして、自身に対する敵対心を決して緩めない彼女の様子を見遣りながら、ダタッツは小さな少女騎士の前に方膝を着いた。
「ただ真っ直ぐ斬り掛かるだけじゃなく、相手の動きをよく見るべきだったな。……今のは惜しかった。惜しかったけど、それでもその歳からは考えられない強さだ。きっと君なら、すぐにもっと腕を上げて――父上の仇だって、討てるよ」
自虐するように乾いた笑みを浮かべ、ダタッツは彼女に手を差し伸べる。だが、ロークはさらに目を鋭く光らせ、その手を払いのけてしまった。
「触んなよっ! お前の教えなんかなくたって、オレは強くなれるんだっ! 父上を殺した奴の力なんで、死んでも借りるもんかよっ!」
「……その怒りはもっともだ。手を借りたくないのも、もっともだ。けど、そんな奴から盗めるものもある。自分の血肉に、繋げることだってできる。――それは、覚えていてくれ」
彼女が背負う悲しみは、怒りとしてダタッツに突き立てられていた。その鋭さを浴びるダタッツは、胸を痛めるように眉を顰めつつも――諭すように、言葉を僅かに紡ぐ。
(こんな小さな娘に、俺は……)
これ以上無為に刺激して、彼女の神経を削るわけには行かない――そう判断したダタッツは、半ば強引にロークの手を引いて彼女を助け起こすと、踵を返して練兵場から立ち去ろうとする。
洗濯用として用意され、楕円状に巻かれていたロープを肩に抱えて。
――が。
「……!」
その眼前に立っていた、一輪の花――ダイアン姫の存在が、彼を立ち止まらせる。彼女は敵意を僅かに滲ませた表情で、ダタッツを待ち続けていたのだ。
憎しみと、その裏側に隠された感情をない交ぜにした、姫騎士の表情は――ダタッツを責め立てているかのようだった。
「これはダイアン姫……。ご機
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