暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
第一章 邂逅のブロンズソード
第2話 姫騎士ダイアン
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ないお言葉です! ダイアン姫!」
「いえ。戦に敗れた身とはいえ、わたくしも民を統べる王族の一人。苦しんでいる民のために力を尽くすのは、当然の責務です。それより……!」
「……そ、そうだ! ルーケンさんっ!」

 ダイアン姫と呼ばれた美少女は、腰を抜かしてしまった彼女の手を取り、ゆっくりと立ち上がらせる。次いで、鼻血を出しながらも壁に手をつき、なんとか立ち上がっていたルーケンのそばに歩み寄った。

「これはひどい……。ただちにわたくしが治療しましょう。ベッドの用意、お願いできますか?」
「は、はい! すぐに!」
「……も、申し訳、ありません姫様……。あなた様のお手を、煩わせてしまうとは……」
「あまり喋っては傷に障ります。あとはわたくしにお任せください」

 ダイアン姫はルーケンの手を取り、真摯な眼差しで励ますように声を掛ける。彼はその手の温もりに触れ、頬に涙を伝わせていた。
 その光景を目の当たりにしていた街の人々は、この国の王女の勇姿に釘付けとなり――自然と拍手を送るようになっていた。

 そして、彼女がルーケンを見つめながら、腰にした剣を空へ掲げる瞬間……そこから新緑の光が迸り、ルーケンの全身を包み込んで行く。すると、歪んでいたルーケンの鼻頭が、次第に元の形に戻っていく様が伺えた。
 この世界で彼女だけが使える、「回復魔法」の効果だ。この場でなければ決して見ることの出来ない光景に、人々の視線が集中していく。

 事件が解決したわけじゃない。
 それでも、最悪の事態だけは回避することは出来た。それだけは間違いないだろう。

「ところで……一つ、気になることがあるのですが」
「は、はい。なんでしょうダイアン姫」

 しかし、この優しさと勇気に溢れた王女には、一つの気掛かりがあった。

「あれは一体、なんなのでしょう……?」
「え、え〜っと……」

 石畳に突き刺さった、得体の知れない下半身のことである。

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