暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
第一章 邂逅のブロンズソード
第1話 帝国勇者
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る。剣から響く「声」は、鍔元から血を求めるように呻いていた。

「……さすがだ。同じ剣士として、敬意を表する。改めて、私からも一騎打ちを申し出たい」
「……死ぬのが、怖くはないのか。あなたは」

 そして、少年の眼にアイラックスが感嘆する瞬間――沈黙を貫いてきた帝国勇者が、初めて口を開いた。
 今までの立ち回りとは裏腹に、その声色は……まるで、アイラックスを気遣うかのような色を湛えている。

「死にはしないさ。私にも、帰りを待つ娘がいる。必ず生きて、娘の元に帰る。それだけだ」
「……ここで逃げ帰れば、容易く叶う願いじゃないのか。俺は、逃げる敵まで斬るつもりはない」
「私が望むのは、平和な王国に生きる娘に会うことだ。逃げ帰った先に、その平和はない」

 帝国勇者の言葉を断ち切るように、アイラックスは背にした巨大な剣を大きく振りかぶる。そして、その切っ先が仇敵に向かう時――再び、この荒野を舞台に一騎打ちが始まろうとしていた。

「……その平和のためにも――行くぞ」
「……わかった。――来い」

 そして、彼らの剣が交わる時。
 この戦争の結末は、大きな変化を迎えて行く……。




 ――私達が暮らすこの星から、遥か異次元の彼方に在る世界。

 その異世界に渦巻く戦乱の渦中に、帝国勇者と呼ばれた男がいた。

 人智を超越する膂力。生命力。剣技。

 神に全てを齎されたその男は、並み居る敵を残らず斬り伏せ、戦場をその血で赤く染め上げたという。

 如何なる武人も、如何なる武器も。彼の命を奪うことは叶わなかった。

 しかし、戦が終わる時。

 男は風のように行方をくらまし、表舞台からその姿を消した。

 一騎当千。

 その伝説だけを、彼らの世界に残して。

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