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ダタッツ剣風 〜中年戦士と奴隷の女勇者〜
第3話 女勇者の敗北
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緒に戦うことはできない。一対一で私に勝てるとは思わない方がいいわ」
「試してみるか? 一対一ならどうなるか」

 上の段からこちらを見下ろし、下卑た笑みで得物を構えるマクシミリアン。その挑発に乗るように、グーゼルは素早い踏み込みで切りかかって行く。
 目にも留まらぬ斬撃の嵐が、マクシミリアンを襲う――が、彼は巨大な盾でその全てを受け切っていた。並の剣士なら、盾で防いでも力押しでガードを崩され、その隙に斬られていただろう。
 それほどまでにグーゼルの斬撃は一つ一つが重く――それら全てを受け切るマクシミリアンの筋力も、常軌を逸しているのだ。
 二人は激しいぶつかり合いを繰り広げながら、螺旋階段を駆け上がって行く。玉座の間を目指すかの如く。

 そのさなかで、巨漢の盾と女勇者の剣は幾度となくぶつかり合い、お互いを削りあって行く。剣の刃が砂のようにこぼれていき、盾の傷が益々深くなっていく。

「公国式闘剣術――征王剣ッ!」

 そして、全てを切り裂く横一閃の居合切りが――宙を斬る。

 マクシミリアンはその技を前に、初めて回避という行動に出たのだ。その体躯に似合わない軽快なジャンプで征王剣をかわした彼は、階段を登りきると玉座の間へ逃げ込んで行く。
 すぐさま彼を追いかけたグーゼルは、玉座の間で迎え撃ってきた彼の縦一閃をかわすと、再び剣を振るった。

 二度目となる斬撃の嵐を浴び、マクシミリアンの盾が徐々に耐えきれなくなって行く。その攻勢の激しさに、彼は僅かに頬に汗を伝わせた。

「公国式闘剣術ッ!」

 その様子を目撃したグーゼルは、もうすぐ勝てると確信し――決め手となる一閃を放つべく、上体を捻る。
 あとは反動に任せるまま剣を振るえば、勝敗が決する。彼女はそう確信し、剣を握る手に力を込めた。

「がっ――!?」

 だが。その直前、柄を握るグーゼルの手がマクシミリアンの蹴りで弾かれてしまった。手から離れた彼女の剣は、高く舞い上がり――床へと深く突き刺さる。

「振り抜く瞬間の、一瞬の硬直。見切ったぜ、あんたの剣」
(まさか! 今までの防戦は、征王剣を見切るための布石だったというの!?)
「バルタザールを殺った技なだけはある。なかなか手強かったぜ。ま、オレの敵ではなかったがな」

 剣を失い、手を蹴られた痛みで片膝を着く彼女の首筋に、斧の刃が当てられる。微かに肌に触れただけで、そこからは一滴の鮮血が滴っていた。

「さて……いよいよお楽しみの時間だ。喜びな勇者様、公女殿下にもうすぐ会えるぜ?」
「……!?」

 下卑た笑みを浮かべ、グーゼルににじり寄るマクシミリアン。その手には、クセニアに着せていたものと同じ――恥辱の衣装が握られていた。

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