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エターナルユースの妖精王
妖精の尻尾 《後》
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「……ったく」

港町ハルジオン。
暗い空に輝く月、昼間より出歩く人の減った街の港で、フードを被った青年は溜め息混じりに悪態をついた。濡れ羽色の長い前髪の奥、澄んだ水色の瞳が周囲を目の動きだけで見回す。

「おい、コイツか?」
「間違いねえ、ボラさんが言ってた奴だ。フードで前髪が長くて目が水色、合ってるだろ」
「だな。つー事は、コイツをボッコボコのギッタンギッタンにしてやりゃいいんだな?」
「表現ガキかよ!」

人気の少ない、とはいえ完全にいない訳ではない港の、丁度誰からも隠れる死角。そこで体勢を整えていこうとしたのが間違いだった。気づけば数人の男に囲まれて、揃いも揃って手には武器を構えていて、観光客狙いの追い剥ぎかと思えばどうやら違うらしい。
背後は壁、前方は男が七、八人。目線をずらせば追加で数人分の影が伸び、隠れているつもりか屋台の陰にもあと二人ほど。
ざっと数えて軽く十人、もしかしたらそれ以上。それを把握した上で、冷静に頭を回転させる。

「にしてもこんなガキ、何だってボラさんは潰せとか言うんだろうな」
「あれだろ。売り飛ばす女共のうちの誰かの知り合いで、余計な事言われねえようにだろ」
「ああ、そうか」

冷静に、冷静に。
売り飛ばす女共、というワードに乱されかけた思考を必死に回す。

「……あれ?」
「どうしたんだよ」
「オレ、コイツ昼間に見たぞ。ボラさんが魅了(チャーム)使って女共惹きつけてた時に」

魅了(チャーム)。昼間に散々聞いた魔法の名前。
だがそんな訳がない。浮かんだ考えを蹴り飛ばす。だってアイツは憧れのギルドに入りに行ったのだから。売り飛ばされる心配なんて、これっぽっちだってないのだから。
だから、こうやって絡まれてる事に、アイツは全く関係な―――――



「胸のデカい金髪と一緒にいた奴だ!」
「ああ、魅了(チャーム)が効かねえからってボラさんがどっかの魔導士騙って船に……」






「……あ?」




どこかの魔導士を騙る。魅了(チャーム)。魔法が効かない。金髪。付け加えてスタイル。船。
そういえばアイツに魅了(チャーム)は効かなかった。アイツは金髪で、スタイルもまあ悪くはない。アイツに声をかけた男はギルドの魔導士を名乗って、船上パーティーに誘って―――――。


……売り飛ばす?
誰が、どこに、誰を?


「…ふざけるなよ、阿保共が」


あのいけ好かない男が?


ルーシィ、を?



「死にたい奴から来い。順番にあの世に送ってやる」




後に、集団のうちの一人はこう言った。
あの男の目は本気だった、と。もしもあの場に部外者がいなければ容赦なく一人や二人は殺していただろう、と。

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