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色を無くしたこの世界で
第一章 ハジマリ
第6話 不気味な男
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 どう言う事だとアステリの方に向きなおすと今度はカオスの方を指差す。
 青ざめた表情で。

「!? ッ……なっ……!」

 そこには機嫌の悪そうなカオスと、その周囲に無数に浮かぶ銀色のナイフがあった。

――あれは……さっき壁に突き刺さっていた……。
――じゃあ、あれはカオスが俺等に向かって……。

 瞬間、感じた事も無い程の寒気が天馬を襲った。
 アステリが助けてくれなければ自分は確実に、あのナイフに貫かれていただろう。

――カオスは、確実に潰すつもりなんだ。
――俺等を……。

「外れたか……最近、狙いが定まらないな。あの時も君の顔にかすっただけだし……」

 そうさっきよりもワントーン低い声でカオスは語る。
 “あの時も君の顔にかすっただけ”……?
 ふと天馬の脳裏にアステリの怪我の事がよぎる。
 秋曰く、あの怪我は何か鋭利な物で切られた様な……そんな傷だと言っていた。
 まさか……と天馬は声を上げる

「アステリの頬の切り傷はお前が……!?」

 天馬の言葉に反応したカオスは「傷?」とアステリの方を見て「あぁ」と不敵な笑みを浮かべる。

「その顔の絆創膏か……。その通り、僕の鋭き刃によってつけられたモノさ」
「……!!」

 そう誇らし気に笑うカオスに天馬は目を見開く。
 それと同時にカオスに対する、恐怖とはまた別の感情が込み上げてくるのを感じた。

「ッ……んでそんな事……ッ」
「は……?」

 その言葉にまた不機嫌そうな表情に戻ったカオスがそう言う。
 と、天馬はキッとカオスを睨み、激しい口調で叫んだ。

「なんでそんな、酷い事が出来るんだっ!」
「!」
「! 天馬……?」

 天馬の突然の大声にカオス――それに隣にいたアステリも驚いた様に目を丸くして彼を見る。

「俺は、アステリとお前の間に何があったのかは知らない。けど……例え何があっても俺の友達を傷付けるなんて許さない!!」

 感情のままそう叫んだ。
 カオスの事はまだ怖い。
 下手をすればさっきの様にナイフで刺されてもおかしく無い。
 普通の人ならそんな奴を目の前にしたら、恐怖から何も言わないだろう。
 それでも天馬は友達を――アステリを悪く言ったり傷付けるなんて許せなかった。

 そんな彼の言葉を聞いたカオスは少し黙った後「フッ」と小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、話し出す。

「友達? 君とそこの裏切り者が、かい?」
「アステリは裏切り者なんかじゃないっ!」

 カオスは「チッ」と舌打ちをすると「君に何が分かる」と天馬を睨み付ける。
 その瞳にハッキリとした怒りの色が見え、天馬の肩がビクッと震える。
 カオスに対する恐怖。それを確かに感じながら、それでも天馬
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