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色を無くしたこの世界で
第一章 ハジマリ
第3話 初めまして
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てか知らずか少年は話を続けた。

「ボクの名前か………………そうだな。『アステリ』……って言うんだ」
「アステリか! よろしく!」

 天馬の言葉にアステリは「よろしく」と微笑むと、「えっと」と話を戻す。

「天馬君にフェイ君。キミ達が助けてくれたんだよね?」

 「そうだよ」と頷くと、フェイが「何故あんな場所に倒れていたのか」と尋ねる。
 瞬間、アステリの表情が曇り出す。と首を横に振った。

「……ごめん。覚えてないんだ……」

 その言葉に天馬の中でハテナマークが浮かび上がる。

――覚えてない……?
――それってどう言う事だろう……

「まだ目が覚めたばかりで頭が回らないんだね……」

 フェイの言葉に「あぁ……なるほど」と納得すると「ゴメン。色々聞いちゃって」と天馬は再度謝った。
 彼はそんな天馬に「気にしないで」と呟くと、改めて部屋の中をぐるりと見回す。
 と、ある一点で視線が止まった。

「あ。ねぇ、キミもサッカーやるの?」
「え?」

 突拍子も無く言われた言葉に、天馬はまぬけな声を上げる。
 ふとアステリの視線の先を見てみると、そこには薄汚れたサッカーボールが飾ってあった。

――あぁ……これを見たのか……

 天馬はそのサッカーボールを手に取ると「そうだよ」と頷いた。
 何度も使われたのだろう、少し空気の抜け柔らかくなったそのボールは、天馬がまだ小さい時。
 木材の下敷きになりかけた所を助けてもらった思い出の品だ。
 このボールがあったから自分はサッカーを好きになれたし、雷門に入って大切な仲間に出会う事が出来た。

 そんな懐かしい気分に浸っていると「そっか」とアステリの嬉しそうな声が聞こえて来た。

「キミにとって、そのボールはずいぶん大切な物みたいだね」
「あぁ。俺にサッカーの楽しさを教えてくれた……大切な宝物なんだっ」

 そうアステリに笑顔で答える。

「そう言えば、どうして急にサッカーなんて言い出したの?」

 そう天馬が尋ねると、アステリは「ボクもサッカーが好きだからさ」と微笑む。
 その言葉を聞いて、見る見る内に天馬の表情が明るくなっていく。

「そっか! 俺、嬉しいなっ!」
「え?」

 天馬の言葉にアステリが不思議そうな顔で呟く。
 すると天馬はいつもの様に笑顔で、それでいてとても楽しそうに「だってさ」と言葉を続ける。

「初めて会った人がサッカーを好きだなんて、なんかさ! 凄く嬉しいんだ!」

 天馬がそう言うとアステリは驚いた様に瞬きをした後、クスクスと笑い出した。
 それを見た天馬は困惑した様子で「何か変な事でも言った?」と焦り出す。
 そんな彼を見ながらアステリは「違う違う」と笑いながら言葉を続け
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