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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第十四話 それでも姉妹
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「これ、知ってるわ。」
足柄が目を大きく見開いて姉に話しかけた。一つの旋律にもう一つ、さらにもう一つと積み重なり、美しい音界が織りなされていく。
「とてもきれいだけれど、とても切なくなる曲・・・・。」
「ええ、パッヘルベルのカノン・・・・。」
妙高は目を細めてうなずいた。

榛名の紡ぎだす音に寄り添うように紀伊は指を走らせていく。時折榛名がちらっと紀伊を見てかすかに微笑んでうなずく。紀伊も同じだった。滑り出すまではとても不安だった。初めてこの話を持ち出された時は正直驚いたし、自信もなかったからだ。
「連弾ですか?」
驚きを込めてそう聞き返すと、榛名はうなずいた。
「一度やってみたかったんです。翔鶴さんや瑞鶴さんが出れなくて、二人だけでは不足かもしれませんが、でも、やってみたいんです。」
「でも、それには・・・・。」
「ええ、お互いの呼吸をつかむことが何よりのポイントです。でも、紀伊さんとだったらできる気がするんです。お願いします。」
そこまで言われては紀伊は断ることができなかった。

 そして今、二人の織りなす幾重もの旋律は美しい音界となってステージの周りを、会場を包み込んでいく。
(この音、この思いが二人に届きますように。)
紀伊は願いを込めて鍵盤に指を走らせ続けた。

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