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馬の様に牛の様に
2部分:第二章
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第二章

「いつもね」
「いつもって朝から?」
 そうなのだった。今は朝なのだ。美佳は結婚と共に転職し丈の実家の鰻屋に入った。つまり将来のおかみとしての勉強もはじめたのである。
「朝から中華丼で五杯なの?」
「食べないとね」
 その爽やかな笑顔での返答だった。
「身体もたないじゃない」
「けれど五杯って」
 その量に唖然となる美佳だった。
「凄くない?」
「そうかな。普通じゃない?」
 しかし丈は平然とこう言うのだった。
「僕はそう思うけれど」
「そうなの。普通なの」
 呆然としたまま声を出す美佳だった。
「そんなに食べるの」
「じゃあ食べたら歯を磨いて」
 メザシを頭からばりばり食べて味噌汁をすすりながら言う丈だった。
「今日も頑張るか」
 屈託のない顔だった。そしてこれははじまりに過ぎなかった。
 朝から中華丼で五杯である。昼はうどんを十玉平気で食べる。それも一気にだ。
「うどん・・・・・・好きなの」
「うん、大好きだよ」 
 行きつけの店で一気に食べる夫の向かい側でまた唖然となる美佳だった。
「もうね。和食も洋食も何でもね」
「それはいいけれど」
 彼女が驚いているのは何でも食べるということではない。その量だ。
 彼女はここで自分のうどんを見る。きつねうどんである。かぐわしい香りを出すそのおつゆの中にあるうどんの量は結構なものである。普通の店の倍近くはある。彼女にとっては幾分か多い程である。だが丈はそれを十杯も、しかも一気に食べているのである。
「朝に中華丼に五杯で」
「食べないと動けないよ」
 ここでもこんなことを言う丈だった。
「そうだろ?食べないとね」
「ええ、まあ」
 それは言うまでもないことである。このことには頷けた。しかしであった。
「あの、太らない?」
「太るって?」
「だから。食べたら」
「大丈夫だよ」
 しかし彼は満面の笑みでこう返すのだった。
「だってさ。毎日走って」
「ええ」
 彼はランニングを日課としている。何と一日二十キロも走っているのである。
「それで筋トレもして仕事もしてだよ。太らないって」
「それはそうだけれど」
「さてと、御馳走様」
 十杯を食べ終えたところで満足した声で宣言する丈だった。
「じゃあ仕事場に戻ってね」
「ええ。じゃあ」
 休憩時間に食べていたのだ。それで食べ終わるとすぐに戻ってまた仕事である。美佳は仕事については何も思わなかった。思うポイントはやはり全く別のことに関してだった。
「戻ってお仕事ね」
「そうしよう、それじゃあね」
 丈は何とも思っていなかった。自覚はどう見てもない。しかし美佳は違っていた。夫のその怪物の如き食欲に唖然となっていたのである。
 朝や昼だけではなかった。夜もである。何と
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