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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第十話 俺と、私にできること 後編
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く瞳を持つ彼なら、きっと気づいてる。

 何より、裏で悲しむ相手には人一倍優しい彼ならきっと、助ける道を選んでいるはず。

「あなたからそれを聞き出し、あなたをその相手から引き離すために戦う」

「なんで、そんなこと……」

「……ホント、なんで、かな?」

 彼は、本当に不思議な人間だ。

 他人のために本気になって、

 他人のために悪役になって、

 他人のために努力して、

 そして、本当に救ってみせるのだから。

 私はふと、ベランダにいる彼の背中を見つめる。

 カーテンがかかっていないから、窓越しに彼を見ることができる。

 すると彼は、左手を強く握り締めて手すりに殴りつけた。

 そこから伝わるのは、彼の怒り。

 ああ、きっと彼は許せないでいる。

 彼女をここまで苦しめている元凶を。

 彼女をこの世界に送り、辛い日々を送らせている、その人を。

 私はまだ、彼ほどの怒りを持ち合わせていない。

 だから分からない。

 彼が必死になって助けようとする理由を。

 でも、同時にわからなくていいとも思った。
 
 なぜなら、

「黒鐘に聴けばいい。 黒鐘は、ちゃんと答えるはずだから」

 きっとこれは、私が代弁することじゃないから。

 そして私が代弁できるのはここまで。

《黒鐘、そろそろ戻ってきて》

 念話を使い、リビングにいる彼に声をかける。

《彼女、落ち着いたか?》

《自分の目で見るといい》

《……了解》

 私が念話を切ると同時に、リビングにいた黒鐘が窓を開けて戻ってきた。

 そして私はまた、聞き手に戻る。

 時刻は午後九時を回っていた。

(帰ったら怒られるかな)

 私は家で待つ家族に、僅かな怯えを感じながら目の前の話に集中する。


*****


「落ち着いたかな?」

「……」

 リビングに戻ると、金髪の少女は落ち着いた様子で俺の方を振り向く。

 先程まで霞んでいた瞳は澄んで、綺麗な赤みのある黒い瞳をしていた。

 俺の問いに無言で頷き、安堵した俺は雪鳴へ感謝の言葉を述べる。

「雪鳴、助かった」

「この借りは大きい」

「ははは、今度近くの喫茶店でなんか奢るよ」

「期待してる」

「了解」

 俺の笑みに、雪鳴は微笑で返す。

 これでも彼女からしたら最大の喜びだ。

 海鳴を見て回って良かったと思いつつ、俺は再びさっきまで座っていた場所についた。

 配置が特に変わっていないけど、カップに入っている紅茶は冷め切っているだろう。

 新しいのを入れるべきかもしれないけど、そろそろ話しを終わりにさせな
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