百一 鬼の国
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「予言の巫女か…」
ぴちゃん、と空洞で反響する。
天井から垂れる氷柱石。其処から滴下する雫が深閑とした洞窟内で響き渡った。
一点の光も入れぬ暗闇。その陰に紛れた二つの人影は双方とも闇に溶け込んでいる。
一方がもはや人影よりも薄い陽炎であるのに対し、片方は確実にその場に存在しているのに気配は無きに等しかった。
「その予知能力が事実ならば、後々我々の障害と成り得る」
「必要とあれば、殺せ…と?」
「流石察しが良いな―――ナルト」
呼び出しに応じて此処まで足を運んだナルトは、ゆらゆらと揺れる陽炎を前に眉を顰める。
【幻灯身の術】によるペインの立体像を胡乱な眼差しで見遣り、彼は軽く肩を竦めた。
「…その巫女とやらは鬼の国にいるのだろう。ならば、火の国…木ノ葉隠れに依頼が来るはずなのでは?」
ペインの言葉足らずの説明にも動揺一つせず、全てを察したかのようにナルトは言葉を続ける。
むしろ今し方己が問うた質問の答えすら彼は知っていたが、そんな素振りなど一切見せず、それどころか怪訝な表情まで浮かべてみせた。
「何故、鬼の国がわざわざ、『暁』に依頼をする?」
「…全く以て、妙な話だ」
同じく訝しげな顔をしたペインがナルトの疑念に同意する。困惑げに頷きながらも彼は鬼の国の意向を淡々と語り出した。
「我々『暁』を犯罪組織だと知った上で、彼らは接触してきた。それも内容は…要人警護だ」
「要人…つまり、その巫女のことか」
「ああ。なんでも強力な妖魔を封印するにあたって、それを妨害する者達から巫女を守ってほしいとの事だ。詳しくは鬼の国内にて話す、と。…どうにも眉唾物だがな」
ペインの言葉の端々に不審の念が感じ取れて、ナルトもまた猜疑心を募らせる。
事実、先ほど述べたナルトの言葉通り、件の鬼の国は火の国の近くにある。
ならばこういった依頼は当然、木ノ葉隠れの里へ向かうはずなのだが、先方はわざわざ何処の国にも所属していない『暁』を指名してきた。
各国が警戒するほどの組織たる『暁』に依頼するなど、鬼の国の思惑は如何なるものか。
真意を探る前に、一つ気掛かりな点をペインの言葉内から見出して、ナルトは早速訊ねた。
「…その強力な妖魔が尾獣である可能性は?」
「無い、……とは言い切れんからな。そこでお前に頼むのだ、ナルト」
唐突な名指しに、ナルトは面倒くさそうな風情で顔を顰める。態度とは裏腹に思考をめぐらしながら、彼はペインに話の続きを視線で促した。視線を受け取って、ペインの口が再び紡がれる。
それはやはり、ナルトの予想通りのものだった。
「この依頼、お前に一任する。その代わり、報酬等は好きに扱ってもらって構わない」
ナルトは表面上うんざりと肩を落とした。
ペインの呼び出しに応じた瞬間から、
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