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執務室の新人提督
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「あの人が決めた事だ。私に不満は無い」
「着任一ヶ月のほかの提督が――」

 がたり、と音が響いた。ソファーから立ち上がり、那智は無言で娯楽室の扉へと歩を進めた。そして、ドアノブを捻り扉を開け――背を向けたまま、青葉に言った。
 
「私はあの人に建造された。お前も、同じだろう」

 扉を閉じた。
 
 
 
 
 
 
 自身だけになった娯楽室で、青葉は手にあるメモを見つめていた。去り際に那智が言った言葉が、青葉の胸中で木霊する。

 ――その通りだ。まったく、その通りだ。
 
 今でも覚えている。覚えていないわけが無い。初の重巡洋艦娘だと喜び、手を叩いていた提督の姿を、彼女が忘れるわけが無い。
 第一艦隊の旗艦として海域を攻略し、演習をし、開発を手伝い、建造された新しい艦娘を一緒に出迎えに行った事も在る。ただ、艦娘層の厚さから、彼女が旗艦であったのは僅かな時間であったが、青葉にとってもっとも輝かしい日々の記憶であった。
 例え何があろうと、絶対に忘れはしないだろう。
 
 そう、何があろうと、絶対に。
 
 青葉は自身の手にあったメモを握りつぶし、俯いた。
 その顔は、もう見えない。

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